信楽高原鐵道を復旧させるために

 
 信楽高原鐵道が9月16日の台風による集中豪雨で、橋梁の橋脚が流されたため、不通の状態が続いており、未だ復旧の目途が立っていない。信楽高原鉄道は、旧国鉄信楽線から転換された第三セクター鉄道である。
 転換後の暫くは黒字経営を続けたが、1991年5月のJR西日本からの乗り入れ列車と正面衝突する大事故を起こし、それ以降は補償や安全対策への投資などが嵩み、慢性的な赤字を経常するようになっていた。そこで2013年4月1日より、「公有民営」の上下分離経営が実施されるようになった。上下分離経営を行う場合、インフラが公的部門が担い、列車運行を民間が担うことが多いが、信楽高原鐵道の場合は、インフラ(路盤や橋梁、駅舎)だけでなく、車両も甲賀市保有することになった。これを行うことで、インフラなどの維持管理から解放されるため、黒字経営になると予想されていたのである。
 しかし今年8月の台風による水害のため、甲賀市の市長は「最悪の場合、廃線もありうる」などと弱気な発言をしている。
 私自身、2005年の台風による水害で大規模な被害を受け、そのまま廃線となってしまった高千穂鉄道のことが頭によぎった。
 
 自然災害に対する復旧には、国が1/4、地方自治体が1/4の補助が得られる。また民主党政権時代に東日本大震災が発生したこともあり、大地震津波などの大規模災害に対しては、経営基盤の脆弱な第三セクター鉄道や地方民鉄に対しては、国が3/4を補助するようにした。だが信楽高原鐵道の場合、大規模災害に該当しないため、国からの3/4の補助は適用されない。

 信楽高原鐵道のインフラは甲賀市が所有しているため、復旧費の3/4は甲賀市が負担しなければならないという。そこで甲賀市の市長は、公共財である道路が被災した際の国の補助規定の適用を考えているという。こちらを用いると、国から2/3の補助が得られるという。つまり国の交通政策は、鉄道などの公共交通よりも、道路優先なのである。

 もし「公共財」として、道路の復旧の規定が適用されたとしても、甲賀市は残りの1/3を負担しなければならない。この出費も甲賀市には、負担となる筈である。
 そこで私は、甲賀市の市長宛に、「1口1,000円の寄付」を募ることや、宝くじの発行を提案している。甲賀市の市長さんが、HPで正直に現状を訴えれば良いのである。信楽高原鐵道の不通により、高校生の通学に対し大幅に支障を来していることや、このような状況が続くと信楽高校の志願者の減少だけでなく、観光客の入込の減少を齎し、高齢者の通院にも支障を来すことなどである。
 
 私が「1口1,000円」と提案したのは、1,000円であれば通学で不便を強いられている高校生でも負担できない金額でない上、全国の人々からも寄付を募りたいからである。
 
 その一方で私は、滋賀県の嘉田知事にも「滋賀県からの補助金も必要である」という旨の手紙を出している。嘉田知事は、「もったいない」という一言で、全国区になるぐらいの有名人であるが、信楽高原鐵道の復旧費を負担することは、全く「もったいない」ことではない。復旧費よりも、鉄道が廃止されることで生じる社会的損失の方が遥かに大きいのであり、私は手紙にその旨を書いている。
 高校生、高齢者という交通弱者の日常生活の足を確保する以外に、「持続可能な地域の維持」という視点からも、国および滋賀県側からの復旧に向けた補助をお願いしたい。