寝台特急「あけぼの」の廃止について

 寝台特急「あけぼの」が、来年3月のダイヤ改正で廃止されることが、新聞で報道された。理由は車両の老朽化であるという。確かに使用されている24系客車は、製造から40年程度経過しており、老朽化が進んでいる。
 だが寝台特急「あけぼの」は、庄内地方羽後本荘能代鷹巣、大館、大鰐、弘前など航空機や新幹線の恩恵に享受しない地域にとっては貴重な列車であり、年間の乗車率も60%と悪くはなかった。この程度の乗車率であれば、サンライズレベルの水準を持った車両(客車でも良い)を開発すれば、人気が出ること間違いなしであっただけに残念でならない。
 寝台特急「あけぼの」が廃止されると、残るブルートレインは「北斗星」「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」と「サンライズ瀬戸・出雲」に急行「はまなす」のB寝台車だけとなってしまう。これらの列車も、「サンライズ瀬戸・出雲」を除けば、北海道新幹線の開業など、不確実な要素も多く、決して安泰とはいい難いのが実情だろう。
 幸い青函トンネル内は、貨物列車も走行するため最高速度が140km/hに抑えられるという点が、せめてもの救いではある。そのため車齢の若い「カシオペア」は、残る公算が高いかもしれない。「北斗星」「カシオペア」は、上野〜函館間で新幹線と並行するとしても、利用者層が全くことなるため、これらの列車から新幹線へのシフトは考えにくい。
 JR東日本は、2016年を目途に「ななつ星in九州」に匹敵するような超豪華寝台列車をデビューさせる計画が進んでおり、電車で設計するという。但しこれらの超豪華寝台列車は、全室が“スイート”で構成される上、マルスで販売されないことから、非常に敷居の高い列車になる。そのため寝台特急「あけぼの」が廃止されると、気軽に乗車出来る寝台列車がまた1つ、消えることになる。
 先日、私のブログでも書いたが、潜在的な夜行ニーズは存在するのであるから、ブルートレインを見直す段階に来ていると感じている。ブルートレインの多くが廃止されたのは、価格の割に車両や設備が老朽化しているためであり、列車の旅を楽しむことを目的とした「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」は別格としても、「北斗星」や「サンライズ瀬戸・出雲」は、高い人気を誇っている。
 都市間を結ぶ夜行列車の場合、「サンライズ瀬戸・出雲」ぐらいの居住性は必要である。そう考えると東京〜松山間や東京〜下関、東京〜大阪間などは、潜在的な需要の多い区間である。
 昨今、JR北海道の事故や不祥事がマスコミを賑わしているが、国鉄分割民営化から27年程度が経過し、制度疲労が目立つようになっている。この辺で、もう一度、見直す段階に来ており、その際にJR夜行の設立と、JR各社を束ねるホールディング会社の設立が不可欠である。
 国鉄分割民営化により、各社に跨る列車のサービスは大幅に低下したが、その弊害が最も顕著に表れたのが、ブルートレインだった。諸外国では、豪華寝台列車などは大切にする傾向にあり、外国人観光客を誘致する観光資源にもなっている。
 ブルートレインは、並行在来線の活性化やローカル線の活性化にも不可欠であり、昨今のスローライフというライフスタイルや肥薩おれんじ鉄道のレストラン列車の人気なども加味すれば、食堂車も備わったブルートレインが脚光を浴びてもおかしくない環境にある。
 今後は、国鉄分割民営化の見直し作業が行われる際、JR夜行と持ち株会社であるJRホールディングスが設立され、より良い方向に制度設計がなされることを願いたい。