『ブルートレイン誕生50年-20系客車の誕生から、今後の夜行列車へ』を上梓するに当たり

 12月上旬に㈱クラッセから、『ブルートレイン誕生50年-20系客車の誕生から、今後の夜行列車へ』を上梓致します。

 ダイヤ改正の度に寝台列車が廃止され、年々寂しくなるブルートレインである。未だJRからの正式な発表はないが、来年3月のダイヤ改正では、寝台特急日本海」が廃止および季節列車への格下げが予定されているという。理由は、利用者の減少と車両の老朽化とされている。

 寝台特急日本海」は、全て開放型寝台車という昭和のブルートレインそのままの姿で運転されている。

 12月に出版する本書は、ブルートレインを観光資源と位置付けている。ブルートレインを活性化させることで観光産業の新たな発展を目的としている。筆者は、「観光」は21世紀の基幹産業として育て上げ、閉塞感が漂う日本に風穴を開けてくれることを願っている。オーストラリアやアメリカでは、長距離旅客は航空機に流れてしまっているが、クルージングトレインは人気があり、観光資源として機能している。

 今では、航空機もあれば新幹線もあり、低廉に旅行したければ高速バスもあり、以前と比較すれば夜行列車の必然性は低下している面は否めない。だが「カシオペア」「北斗星」「トワイライトエクスプレス」などの豪華寝台特急は根強い人気があり、「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」も、最終便の後に目的地を出発し、始発便よりも先に目的地に着く以外に、多種多様な個室寝台が人気を集めている。このようにまだまだ夜行列車を活性化させることは可能であり、「環境」と「観光」が21世紀の基幹産業となる日本では、ブルートレインを含めた夜行列車こそが、それにふさわしい交通手段であると言える。

 1部では、今までのブルートレイン(寝台車)の登場とその経緯について、時代背景なども踏まえて雑学的に紹介している。20系寝台車誕生以前のマイネ40、マイネ41、10系寝台車に始まり、20系客車誕生の経緯と、設計した星晃氏の思いなどを書いている。「B寝台車は、3段式で52cm幅の寝台は狭くて窮屈」と言われていたが、本書を読むことで違った見方が可能になると思っている。3章では、世界初の昼夜兼用の寝台電車として誕生した583系について紹介している。583系電車は、「3段式で窮屈、ボックスシートは急行列車のようで嫌だ」と言われたが、乗り心地や防音性は優れており、設計した星晃氏の技能の高さを知ることができる貴重な車両である。4章では、14・24系客車について紹介しているが、何故、乗り心地や防音性が悪いのかを詳しく述べている。

 2部からは、ブルートレインの活性化を「観光」と「環境」という視点から模索している。7章では、ブルートレインの現状を知ってもらいたく、高速バス、長距離フェリー、航空機、新幹線などの他の輸送モードの現状と長所・短小を紹介した後、料金に関する規制が「届出制」に緩和され、事業者の裁量で寝台料金の値下げが可能になったにも関わらず、一向に改善されない割高な料金の現状と、妥当な料金について述べ、ブルートレインの活路(どのようなところであれば、生き残れるか)について述べた。

 それゆえ本著は、鉄道マニアはもちろんのこと、国鉄OBや交通・観光関係の研究者、観光関係の従事者(旅行会社・旅行代理店、観光組合)、商工会議所、環境保護の非営利組織の方々にも興味を持って読んで頂けると確信している。