臨時「きたぐに」「日本海」に乗車して

 4/26と4/27の両日に掛け、今年3月のダイヤ改正で臨時列車へ格下げとなった「きたぐに」と「日本海」に乗車した。「きたぐに」には、ひき続き583系電車が使用されるのは個人的には嬉しいのだが、A寝台車の連結が廃止されただけでなく、普通車が皆無となった。そのため従来は、比較的低廉に旅行したい利用者が「きたぐに」の座席車を利用していたが、今回からはB寝台車かグリーン車を利用せざるを得なくなった。
 ダイヤであるが、先ずは今回から湖西線経由となったため、大阪駅や京都駅の案内で、「京都を出ると敦賀まで止まらない」という旨の放送や案内が行われていた。次に下りのダイヤは2時間程度スピードアップされ、かつての「つるぎ」のダイヤに近くなり、長岡到着が5:56で終点の新潟が6:54となった。佐渡島へ渡る人には良いかもしれないが、使いづらいダイヤとなった。
 そのような要因が重なり、4/26の乗車率は70名強であった。これはB寝台車は下段が埋まる程度であり、グリーン車は10名程度の利用者であった。サロ581自体が陳車であるため、それを目的として乗車したと感じる。グリーン車は、座席は交換されているが、昔ながら2-2の座席配置であり、アメニティーキットなどの備え付けは一斉無いため、寝台車と比較すれば割高に感じる。ただ天井が高いため、寝台車のような圧迫感は感じない。
 今回の状況を見ていると、座席指定車でも良いから2両程度、普通車を復活させて、もう少し利用しやすくするべきだと感じた。製造から45年経過しているが、発車・停止の際の前後の動揺はなく、かつ横揺れも感じなかった。また防音性にも優れているため、基本設計では「サンライズ瀬戸・出雲」と比較しても遜色はなかった。
 B寝台料金やグリーン料金は、正直言って高い。B寝台車の下段で4,000円、中上段は2,500円程度が妥当である。ただしパンタグラフ下の中段は、頭上が広いために4,000円でも良いかもしれない(特別B段として販売しても良いかもしれない)。グリーン料金も大阪〜直江津間が2,000円、大阪〜新潟間で3,000円が妥当ではなかろうか。
 一方の「日本海」であるが、こちらは24系客車6両で運転され、全てB寝台車である。下りのダイヤはかつての「日本海3号」のダイヤに近いが、上りはかつての「日本海2号」と「日本海3号」のダイヤをほぼ踏襲しているため、直江津で時間調整のために1時間近く停車する。
 「きたぐに」とは異なり、こちらは100名以上の乗車があったため、B寝台車の下段はほぼ埋まり、上段にも利用者があった。かつてのブルートレインは、B寝台車の上段も埋まるのが常識であり、特に「北斗星」が誕生した当時はB寝台車の上段であっても、寝台券の入手が困難だった。それがこの20年で、平素は上段には利用者がなく、下段ですら埋まらない列車も珍しくない状態になっていた。
 その理由として、先ず寝台料金が高すぎる。2段式のB寝台車は、上段・下段共に6,300円であるが、今日のスーパーホテルは、簡単な朝食込みで4,000円台から泊ることができる。寝台車とスーパーホテルは性格が異なるために単純比較はできないかもしれないが、あの程度の設備で6,300円は高過ぎる。上段であれば3,500円程度、下段でも4,000円程度であろう。その料金に簡単な歯ブラシ程度込でである。1995年からは、料金に関する規制が「認可制」から「届出制」に緩和されているため、事業者の意思で値下げは行えるようになった。ツアーバスは、乗客が少ないと思えば、値下げ(直前値下げ)を行ってくる。もう少し寝台料金の設定に弾力性があっていい。
 乗り心地であるが、こちらは発車・停止の際の前後の動揺と衝撃が酷いため、寝ていても起こされてしまう。機関士の腕もあるが、20系客車はこのようなことはなかった。20系客車のB寝台車は、3段式で52cm幅の寝台であったため、確かに狭くて窮屈ではあったが、乗り心地と防音性には優れていた。これは「カシオペア」と遜色ないレベルであった。筆者は、「カシオペア」にも乗車しているが、乗り心地と防音性に関しては20系客車の水準に戻った(向上した)と感じたものである。24系客車の床に絨毯(タイルカーペット)が敷かれているため、以前よりも防音性は向上しているが、583系電車と比較すれば完全に見劣りする。
 「日本海」が比較的好調であったのは、大阪〜青森、大阪〜秋田間は、航空機の便数も少ないため、潜在的な夜行需要が見込めるのである。JRが車両のグレードアップ(新車導入)などを行っておれば、「日本海」が臨時列車に格下げとなるようなことはなかった。車両はJR東日本が所有しているが、車両の更新を行うとなればJR西日本と共同開発するなど、方法は幾らでもある。資金的に苦しいのであれば鉄道建設・運輸施設整備支援機構から無利息の融資を受けて製造する方法もある。鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、資金的に苦しい内航船社の船舶の建造に対しても無利息で融資を行っており、ブルートレインの車両製造に関しても、それを適用するべきである。
 ブルートレインが衰退してしまうと、車両メーカーもそれだけ受注が減る訳であるから、衰退に繋がってしまう。
 「日本海」に関しては、東北の高校が修学旅行で関西に出掛ける際、利用していた実績などがあるため、GWやお盆、年末年始だけに限らず、秋の行楽シーズン(十和田湖の紅葉シーズン)や週末も運転する季節列車として運転日数を増やすだけでなく、上りのスピードアップを行うと同時に、もう少し停車駅を増やしたい。
 下りは、大阪発を18:00過ぎとして青森着を9:00前にしたい。
 そのような手直しを行うことで、まだまだ潜在需要を取り込むことが可能である。
 夜行列車も重要な公共交通であり、利用者に対する選択肢も残して欲しい。交通基本法が国会で審議されているようであるが、「豊かな交通」とは安全・便利・快適であるという条件を満たした上で、「さまざまな選択肢がある交通」と考えている。航空機や自動車と比較して地球環境にもやさしく、乗り換えの無い長距離夜行列車を見直す(復権)する時代が来ているように感じる。