先日の京都・亀岡の事故と通学路の安全

 4/29の未明にツアーバスの大惨事が発生したが、それより数日前に京都府亀岡市で18歳の少年が運転する自動車が、通学途上の児童の列に突っ込み、児童1名と引率の保護者1名が亡くなる痛ましい事故が発生していた。
 この事故も、少年の居眠り運転が原因であるが、こちらは無免許運転であったため、情状酌量の余地は全くない。お亡くなりになられた児童と引率の保護者の方の無念を思うと、腸が煮え繰り返る思いである。未だ幼い子供さんを交通事故で亡くされた親御さんや、引率の保護者の方を無くされたご家族の方々は、悪質極まりないドライバーに復讐したい気持ちで一杯であるだろう。
 筆者は、京都府交通政策課と亀岡市の企画課(交通政策課という部署はない)に、「今回は、悪質極まりなかったが、通学路の事故は日本のいたるところで起きる危険性が大である。交通ルールを遵守している善良なドライバーであっても、カーブミラーの死角(水滴が付いていたり、光線状態による反射で見づらい)などで生じることがある。交通事故を減らすことは、子供達の通学時の安全性を確保するだけでなく、高齢者の安全も確保することになる。それには車の絶対数を減らす原因療法を採用しないと駄目だ。皆が車を利用するのは、公共交通が不便であるためであり、JR山陰本線に駅を増設するなどを行い、自家用車から鉄道を含めた公共交通へモーダルシフトをさせるべきだと考えている。それが交通事故を減少させるだけでなく、治安の向上すると同時に中心市街地の活性化にも繋がる」という旨を伝えている。
 通学路の交通安全に関わる部署は、自治体の交通政策課(設けられていないことが多い)というよりも、教育委員会や警察が中心となっているが、どちらも公共交通に対する関心は非常に薄い。
 鹿児島県や熊本県などでは、鉄道や路線バスが廃止されたことで公共交通空白地域が広がっている。だが教育委員会などは、高校生に対しては「バイク通学」という方法で対応しようとする。小中学生に対しては、一部でスクールバスを運行している地域もあるが、親が自家用車で子供を送迎することで対応していることが多い。
 教育委員会となると、政府の関係する省庁は、文部科学省となる。文部科学省が定める学習指導要領では、「交通」に関する取り扱いは、地歴科(中学校までは社会科)と保健体育科である。社会科系の教科では、「交通手段の発達は、日本の発展にどのような影響を与えたか」という観点と「貿易」が中心となる。保健体育科では、「交通安全」を取り扱っているが、危険回避の対処療法や怪我をした際の応急処置などを取り扱っている。また高校の教科書では、バイクに関する項目が散り上げられている。つまり文部科学省も、「モータリゼーション推進」という姿勢であり、「国民皆免許」を目指している。そのため公共交通に対する関心は、非常に薄い。
 警察であるが、交通違反の取り締まりや事故などの処罰に熱心であり、公共交通などには全くと言っていいほど関心が無い。ただ交通事故が増えすぎると、マスコミで警察の取り締まりを批判されるため、それを恐れている傾向にはある。1980年代であれば、暴走族が社会問題になった時は、交通事故と同等に暴走族対策に熱心であった。
 警察は、何かが生じてから動く傾向にある。それゆえ筆者は、「警察はサービス機関であり、もっと自分たちから市民の中へ入っていかなければならない」と考えている。実に「公共交通の維持・活性化(路線バス)」のシンポジュームなどに警察関係者が顔を出すことは、皆無と言っても過言ではない。警察はバス停の設置時の安全性などでも重要な役割を担っているだけでなく、交通規制を実施する権限も持っているのであるから、もっと公共交通に関心を持つべきである。つまり御免で済んでも警察は、必要なのである。サービス要員として・・・。
 治安の問題に関しても、車中心の社会になると、誘拐や殺人などの凶悪犯罪が増加する。筆者が子供の頃は、大阪はスリやひったくり、泥棒などが多いと言われたが、最近では奈良県などの地方都市の方が誘拐などの凶悪事件が多発するようになった。自動車が通り抜けるだけの街では、歩道などを人が歩かない。そうなると人による監視がないために、凶悪犯罪などが起きやすくなる。それが公共交通が発達した街であれば、駅やバス停に人が集まるために、治安の維持に貢献する。また公共交通が充実した街は、街に活気(にぎわい)があるだけでなく、震災などからの復興も早い。事実、2011年3月11日の東日本大震災時は、走って小高い丘に逃げた人は助かったが、自動車で逃げた人はほぼ全員死亡したたけでなく、自動車が津波で流されて家屋などにぶつかり、被害を拡大させた。そしてガソリン・軽油などの燃料は、公共交通に対し優先的に販売される。そのため公共交通の無い地域は、日常生活の足が奪われただけでなく、援助物資も満足に届かない状態にあった。もし路線バスがあったならば、それに援助物資を積んで届けるという方法で対応できるため、復興も早い。
 以上述べたように、公共交通というのは、それぐらい大切なインフラでもあり、地域の資源でもある。そのため教育委員会や警察の方々も、公共交通に対して関心を持ってもらいたい。それが子供を交通事故だけでなく、誘拐などの凶悪犯罪からも守ることに繋がるのである。
 そこで筆者は、藤井聡・谷口綾子著『モビリティーマネジメント入門』学芸出版社(2008年)、仙田満・上岡直美著『子どもが道草できるまちづくり』学芸出版社(2009)年の2冊を推薦致します。さらに地方では公共交通が脆弱であるため、堀内重人著『地域で守ろう!鉄道・バス』学芸出版社(2012年)と堀内重人著『鉄道・路線廃止と代替バス東京堂出版(2010年)もお薦め致します。
http://tairyudo.com/tukan6bo8800/tukan8904.htm
http://www.tokyodoshuppan.com/book/b80335.html
 子供の日が近いこともあり、通学路を通して子供の安全を考えたく、ブログを書きました。率直に言えば、「諸悪の根源は車中心社会」であり、自動車を円滑に流す(自動車最優先の街づくり)から脱却することです。それには自動車の絶対数を減らすことが不可欠です。歩行者や公共交通優先の街づくりを行うことで、私達も本当の豊かさが得られるのではないでしょうか。