ツアーバス事業者の杜撰(ずさん)な運行管理

 先月の4/29に関越自動車で発生した「陸援隊」が運行するツアーバスの事故であるが、捜査が進みに連れて、運行管理の杜撰さが露呈している。筆者も、道路運送法に違反している項目が30以上もあるとは予想もしておらず、呆れて物が言えない状態にある。
 陸援隊が、運転手に対する運行前の検査(健康状態、アルコール残量)を行っていなかったと知り、憤りを感じたものであるが、運転手を禁止されている日雇いで雇い、事故を起こした運転手を含め、「陸援隊」の名義を貸してツアーバスを運行させるなどの白バス行為をさせていたと知り、怒りを通り越して完全に呆れ果ててしまった。
 筆者は、ツアーバスではないが、タクシーの規制緩和に対しても、「大問題である」と感じていた。2002年2月の道路運送法の改正により、路線バスの規制が緩和されたと同時に、タクシー事業に対する規制も緩和された。これにより運賃の設定や市場への参入などが容易になった。一部では、福祉タクシーとしての参入もあったが、タクシーの運転手の給料は歩合制であるため、運賃単価の減少を「増車」という方法で対応するようになった。その結果、供給過剰となり、タクシー運転手の手取り給料は下がり、朝の5:00から夜の11:00まで一日18時間も働いても、年収は僅か220万円という状態になってしまった。さらに運転手の手取りが減っているため、タクシーを通勤用に使うことを認める事業者も出始めた。そうなると自宅から出社せずに、そのまま営業に従事する運転手も現れ、健康管理やアルコール検査が行われず、タクシーが起こす事故が多発するようになった。
 筆者自身は、「タクシーなどは規制緩和になじまない」と考えており、運転手の最低賃金として300万円/年は保障すると同時に、歩合に相当する部分は、ボーナスや昇給で調整するようにすべきだと考える。そうしなければ、誰もタクシー運転手になろうとせず、安定供給に支障を来たすことになるだろう。
 2000年代から始まった運輸業界の規制緩和は、そこで働く運転手などの現場部門の人達に相当な負担を掛けており、早急に改善しなければならない。また国土交通省は、「陸援隊」という会社は、「バスを安全かつ安定に運行する能力が無い事業者である」と位置付け、業務停止や事業許可の取り消しを検討していると聞くが、妥当な判断であると考える。
 4/29のツアーバスの大惨事は、ツアーバスの運転手や陸援隊という事業者だけの責任ではなく、2007年2月にツアーバスの事故で死者を出したにも関らず、「ツアーバス」という形態を黙認してきた国土交通省の責任でもある。
 ツアーバスは、居眠り運転以外にも、車両火災という問題も時々起こしている。資金難から中古車両を購入することが多く、車両整備が杜撰になることが原因である。
 この大惨事を教訓に、車両検査の規定などの強化を行い、私たちが安心して利用できる公共交通として欲しいものである。