JR九州の豪華クルージング列車について

 先日、JR九州が来年の秋から運行を計画している豪華クルージング列車の名称が、仮称「ななつ星」を考えているという記事があった。私は、超豪華クルージング列車であるため、ドバイにある全室スィートルームの七つ星ホテルに例えたのか?と考えたが、九州の7県がどうやら根拠のようである。
 最も高いスィートルームは、1人当たり50万円もするため、「デフレ化の日本では、誰が利用するのか。中国人の成金達ばかりではないか」という予想がされている。
 確かにバブル崩壊後はデフレの時代ではあるが、パークハイアットホテル、ウエスティンホテル、フォーシーズンズ椿山荘などの外資系高級ホテルは、そのホテルに宿泊することが一種のステータスになっている。1泊素泊まりで最低でも4万円/泊以上するにも関わらず、顧客から値上げの要求があるという。また豪華クルージング船を利用した世界一周ツアーなども、2年ぐらい先まで予約が埋まっているという。
 ここで言えることは、ブランドが価値を産む時代になったということである。1人当たり50万円という金額を徴収するとなれば、当然のことながらそれに対する満足度が要求される。ただ単に部屋の設備や良かったり、乗り心地が良いだけでは、利用者は満足しない。50万円も払った利用者に対しては、当然のことながらウエルカムドリンクのサービスが行われるが、ただ単に「お客さん」と呼ぶのでは、利用者には不満である。やはり「堀内さん」というように、利用者の名字で呼んで欲しいものである。さらに高級ホテルの場合、利用者の石鹸の好みや枕の硬さなどに対する対応も必要になる。上に上げた外資系高級ホテルは、そのような要求に対しても、迅速に対応しているという。
 要するに、このような豪華クルージング列車を運行するとなれば、サービスに当たる乗務員の教育が不可欠であり、最低でも1年間は高級ホテルで接客の研修を行う必要がある。
 私は、「北斗星」で“ロイヤル”を利用したことはあるが、「お客様」という呼び方であったし、石鹸や枕、ゆかたも一種類しかなかったため、かゆい所まで手が届くサービスには程遠かった。第一、寝具からしてB寝台車と同様であり、開放型A寝台車よりも見劣りする。ルームサービスやウエルカムドリンクのサービスを行うといっても、食堂車の従業員であり(当時はJダイナー)、専属スタッフではなかった。
 JR九州が運行する豪華クルージング列車が成功するか否かは、より良い人的サービスが提供できるか否かに関わっていると考えており、1室1名の専属スタッフを配置して利用者の身の回りの世話をするようにしなければならない。高い料金は、設備というよりも人的サービスに対する対価と考える必要があるだろう。
 九州内をクルージングする豪華列車が成功すれば、関西〜九州間、東京〜九州間の夜行列車の復活を願いたいところであるが、全車を仮称「ななつ星」レベルにすることは困難であるため、従来の“シングルデラックス”や開放型A寝台などを組み込む必要はあるだろう。豪華A個室(スィート以上)には、仮称「ななつ星」で培ったノウハウを活かして欲しいと思っているし、かつての“走るホテル”を復活させるには、「車掌補」に相当するサービス要員は乗務させるようにしなければならない。20系客車が“走るホテル”と言われたのは、当時の生活水準を遥かに超えた豪華車両であったこともあるが、車掌補(列車ボーイ)による身の回りの世話などの人的サービスも無視できない。「カシオペア」にも乗車しているが、車掌以外のサービス要員は殆どおらず、「ただ単に全車が2人用A個室寝台車を連ねた列車である」という印象である。
 JR九州が来年から運行を開始する豪華クルージング列車は、日本の観光産業を育成する(外国人観光客を誘致)する上で、目玉商品として育成しなければならず、政府も意識改革して欲しいと思っている。米国や豪州などの先進国であっても、豪華クルージング列車は外貨獲得のための重要な手段であるため力を入れている。JR九州が豪華クルージング列車を運行開始した暁には、政府関係者は積極的に諸外国にPRして欲しいと思っている。
 JR九州が来年から運行を開始する豪華クルージング列車の成功を心から祈っている。



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