ツアーバス連絡協議会が導入を検討している自主規制

 先日のツアーバスの大惨事を受けて、39社で作る高速ツアーバス連絡協議会は、夜間に450km以上を運行する場合は、交代乗務員を乗務させることや、HPなどでは交代の乗務員の有無や貸切バス会社の保険への加入状況、車両を自社で保有して「乗合バス(路線バス)」への早期移行を目指す自主的な安全対策をまとめた。
 私は、『高速バス』グランプリ出版(2008年)や『ブルートレイン誕生50年』クラッセ(2012年)で、ツアーバスという形態を批判すると同時に、路線バスの許可を受けて公正な競争を行うことを提案してきた。
 今回の自主規制では、HPで交代乗務員の有無の表示や、貸し切りバス会社の保険への加入状況を義務付けることなどは、大きな前進と見て良いだろう。但し夜間に450km以上を運行するバスに対しては、交代の乗務員を乗務させるという基準では、まだまだ甘いと言わざるを得ない。
 450km以上の運行ということは、高速道路を100km/hで走行したとしても、4時間以上の連続運転になり、昼間でも運転手は目や神経が疲労する。それが夜間であると尚更であり、運転時間を短くするために110km/hを超える速度で運転する可能性も否定できない。路線バスとして高速道路を運行するバス事業者は、90km/h程度の速度で運行するが、ツアーバス事業者の中には、110km/hの速度で高速道路を運行している事業者もある。
 そのような事情もあり、JRの夜行列車の場合は、2時間ごとに運転手が交代して安全を担保している。ATSやEB装置などの保安システムが完備しているにも関らずにである。
 私は、夜行高速バス(ツアーバスを含む)が安全を担保して運行できる妥当な距離は、300km程度であると考えており、それゆえ300kmを超えると交代の運転手を乗務させなければならない。
 ツアーバス最大手のウイラー・トラベルは、路線バスの「許可」を得て、路線バスとして運行することを計画しており、利用者から信頼性を得るには、路線バスへの移行が不可欠となるだろう。路線バスとして運行するとなれば、国土交通省から安全かつ安定した供給能力を有していないと、「許可」が下りない。
 従来の高速バスの運賃は、乗用車で高速道路を走行した際の料金を基準に決められてきたが、陸援隊が提供していた3,500円は、シートピッチを詰めて、2-2の横4列に座席を配置していたとは言え、超破格である。常識的に考えれば、いくら安くても5,500円ぐらいの水準になるだろう。
 安全性を担保するための2人乗務の徹底や、正規の発着場へ発着するための発着量の支払いや、国土交通省に対する運行計画書などの提出と、道路を管理する警察との調整などのコストが発生するため、超破格の提供はできなくなるが、4/29のような大惨事を2度と出さないようにするためには、致し方ないことだろう。
 既存の高速バス事業者も、ウイラー・トラベルを恐れるのではなく、先進的なサービスを打ち出した点は評価して、自社のオリジナリティー溢れるサービスが登場することを願っている。台湾の高速バスは、規制緩和後は値下げ競争よりも、居住性を向上させる方向へ動いたため、高速バスのサービス水準は世界最高と言われる状態に達した。高速バスの規制緩和に関して参考になるのが台湾の事例であり、バス事業者も積極的に学んで欲しいと思っている。