三江線のバス増発による社会実験

 10/1〜12/31まで、三江線でバスを用いた増発の社会実験が開始された。バス増発の名目は、バスを増発することで三江線の利用者がどの程度、増加するのかを見るためである。何故、バスで増発の社会実験を行うのかと言えば、三江線はJR化後は合理化という名目で列車交換設備を撤去すると同時に、減便を行ってきた。特に江津〜石見川本間は、列車交換設備のある駅は皆無となってしまったため、列車の増発は非常に困難である。江津AM6:00の次は、12:44まで列車は無い。このようなダイヤでは、通勤・通学に利用できないため、沿線の高校は既にスクールバスを運行することで対応している。そのため三江線を利用して通学する生徒は皆無に近い。
 ところで通院や用務で出掛ける人にとれば、9時頃に列車が欲しいところである。そこで今回の社会実験では、10時台にバスが増発されている。バスの運行は、中国JRバスに委託されており、52人乗りの乗合バスが使用される。
 口羽〜浜崎間などでは、道路事情も悪いこともあり、芸備観光の24人乗りのマイクロバスや芸備タクシーの9人乗りのワゴン車が使用されたりする。
 筆者は、10/11に三次9:57発の石見川本行きの列車に乗車した。三次駅の時刻表を見ていると、芸備線の備後落合行きも朝の6:00台の列車の次は、13:12まで6時間以上も列車が無い。福塩線も同じような状況であり、4方向から鉄道が集まる結節点にしては、非常に寂しい状態にある。
 三次を発車した時点で乗客は、筆者を含めて11名であったが、江平からは三瓶山方面へハイキングに出掛ける団体が乗車したため、車内の乗客数は40名以上になった。ただ三江線は、30km/hの速度制限の箇所が多いため、三次〜口羽間は列車の速度が上がらない。これは急カーブがあるためではなく、落石などが生じた際、直ぐに停車できるようにするための処置である。このようにJR西日本は、線路の点検回数を減らし、徐行することで安全性を担保するようにしている。
 江平からの団体は、粕淵駅で降車したため、粕淵〜石見川本間は10名強の乗客となった。三次からの列車は、約1時間50分後に江津行きとなる。この列車の乗客は10数名であり、途中駅での乗降もあったが、概ね終点の江津まで大きな変化はなかった。江津に到着した後、9分後に三次行きとして折り返すが、江津発車時の乗客数は20名強であった。車内には、「秋の乗り放題きっぷ」が販売されていたこともあり、旅行者の姿の見られたが、病院帰りの高齢者の姿が多かった。
 だが通学の時間帯に入るにも関らず、高校生などの姿は車内には見られなかった。平素から三江線を利用する高齢者にバスによる社会の話を聞くと、それが実施されていることは知っており、何度か利用しているという。ただバスは、トイレが無いことや、鉄道と比べると揺れが多く、乗り心地では劣るとのことであった。
 筆者はバスに乗車したく、石見川本の1つ手前の因原で列車を降り、16:23の江津行きの社会実験の増発バスを利用することにした。バスは、石見川本〜江津間では、三江線とは江の川を挟んで反対側の国道261号線を走行する。因原は、駅の裏側にある道の駅からバスが出る。そして次の鹿賀は、三江線鹿賀駅の傍までバスは乗り入れるが、その他は駅とバス停は川を挟んで反対側にあるため、完全に離れてしまっている。
 そのため社会実験の増発バスの利用者は、因原までは1名であったが、この人は因原で下車した。そして私ともう1人の女性が乗車したが、その人は次の鹿賀で下車したため、終点の江津までは筆者だけとなってしまった。
 中国JRバスの運転手に事情を聞いたところ、このような状況だという。
 三江線のバス増発の社会実験に関しては、三江線の駅だけでなく、石見川本町などは飲食店にもポスターを貼っている。そして三江線を利用して訪問した場合、スタンプが押されて3つ溜まると、景品と交換するなどの試みを行っている。石見川本町にとれば、三江線が仮に廃止されるようなことになれば、街の死活問題となるため、少しでも利用者を増やしたいところだろう。また潮駅周辺には、天然温泉もあるため、パンフレットなどを作り、温泉旅館のPRも行っていた。
 三江線の沿線には、メジャーな観光地はないかもしれないが、先ず江の川沿いを走るため、景色は悪くない。キハ40系を改造したトロッコ列車を走らせても良いぐらいである。そして三瓶山の麓に位置するため、ハイキングを楽しむことができる。さらに潮駅周辺には、天然温泉が存在する。
 もう少し早く、観光資源の発掘を行っておれば、三江線は観光路線として活性化しただろうと思うと少し残念な気持ちになるが、沿線自治体が力を合わせて三江線の存続・活性化を推進させてくれることを願う。