ツアーバスの功罪

 2002年2月1日から改正道路運送法が施行され、需給調整規制が廃止された。これにより新規路線への参入が、従来の「免許制」から、バスを安全に安定して運行する事業者には路線参入を認める「許可制」に規制が緩和された。参入規制が「許可制」に緩和されたことに伴い、運賃規制も「認可制」から「届出制」に緩和され、市場原理にゆだねる傾向が強くなった。
 市場原理にゆだねる傾向が強くなるということは、ドル箱路線では新規参入が活発となり、競争によるサービス向上が期待できる。だが不採算路線では、撤退に関する規制も「許可制」から「届出制」に緩和されたため、事業者の判断で不採算路線から撤退が可能となり、公共交通空白地域が拡大することになった。
 規制緩和と同時に、ツアーバスという形態で高速バス市場に参入する事業者が増えた。バス事業者にとれば、高速バス事業は利益率の良い事業であった。
 ところがツアーバス事業者が、路線バスよりも割安な運賃で参入するため、路線バス事業者VSツアーバス事業者間の競争が生じるようになっている。ツアーバス事業者は、割安な運賃を実現するために、中古車や韓国製のバスを購入して市場へ参入してくる傾向にあるが、ツアーバス事業者最大手のウイラー・トラベルは、14種類の座席やサービスを設定し、豪華からエコノミーまで、幅広い商品を設けている。また女性客向けのサービスも充実しており、女性専用者も女性好みの花柄の座席や、広い化粧室を設けている。
 ツアーバス事業者は、従来のバス事業者よりも割安な運賃だけでなく、豊富な商品設定を行うなど、利用者のニーズを掴んだ戦略が功を奏しているが、利益率が良い路線や区間にしか参入しないため、従来からの路線バス事業者は、過疎地の不採算路線からの撤退を余儀なくされている。またツアーバス事業者は、旅行業法が適用されるため、正規のバス乗り場から発着を行うのではなく、駐車場や道端から発着するため、道路管理者などに使用料を支払っていないことが多く、公正な競争になっていない。その上、ツアーバスは、旅行商品であるため、運賃や運行経路などについても国土交通省へ届け出る必要もない。それゆえ利用率が悪いと思えば、直前になって値下げを行ったりする。
 筆者個人の考えは、ウイラー・トラベルなどは、多種多様なサービスを生み出した努力は、停滞していた高速バスサービスの活性化に貢献したと言えるが、ツアーバスという形態が問題ありと考えている。つまり路線バスと公正な競争になっておらず、今後は正規のバス事業者(路線バス)として、正規の発着場へ発着するように改めるべきだろう。
 ツアーバスという形態で運行することは、公平かつ公正な競争を阻害するだけでなく、既存事業者が過疎地の不採算路線から撤退せざるを得ない問題が生じているため、路線バスとして「許可」を受けて運行するべきである。

PS:4/29に居眠り運転により、死者7名、重体3名、重軽傷36名という大惨事が発生したが、ツアーバス事業者の中には中古バスを購入している事業者も多くある。そのような事業者の中には、整備不良によりバスが炎上する事故も起こしており、JRバスや大手バス事業者と比較して、あまりにも価格が安い事業者のバスは、敬遠した方が良いかもしれない。