上毛電鉄のサークルトレイン

先日、上毛電鉄に乗車した。目的は、自転車の持ち込みを認めている現状を取材するためである。浅草から久々の特急「りょうもう」に乗車し、終点の赤城駅で上毛鉄道に乗り替える。上毛電鉄との接続は1分であるが、東武鉄道から乗り換えるとなると、構内踏切を渉らなければならず、特急「りょうもう」の後ろ(浅草寄り)に乗車していると、乗り継げない。
 上毛電鉄は、群馬県を走る中小の民鉄であるが、経営状態は芳しくなく、輸送密度は2,000人/日強であるため、国鉄の廃止対象であった赤字ローカル線並みの水準である。
 そこで群馬県がインフラ部分の維持管理費を負担している。世間では、“群馬式上下分離経営”と言われている。
 上毛電鉄は少しでも利用者を増やしたく、駅に隣接して駐輪場を設けるだけでなく、車内に自転車の持込みを認めている。自転車の持ち込みは、前から2両目の車両に限定され、平日であれば朝のラッシュを過ぎると、車内に自転車が持ち込める。筆者が乗車した時には、4台程度の持込みがあり、定着しているように思った。
 上毛電鉄の終点である前橋中央駅は、JRの前橋駅とは1km程度離れており、シャトルバスが運行されている。このシャトルバスの運賃は100円である。
 前橋市は、群馬県の県庁所在地であるが、上毛電鉄の前橋中央駅だけでなく、JRの前橋駅の周辺に繁華街らしきものはなく、ただ単に車が通り過ぎていくだけの街になってしまっている。群馬県はクルマ社会であるが、あまりにも無味乾燥とした街であり、人が歩かない街であるから、街に賑わいが感じられない。日本の県庁所在地の中で、これほど賑わいの無い街は前橋市だけではなかろうか。
 かつて駅前には、イトーヨーカドーやサティーなどのスーパーマーケットがあったらしが、クルマ社会の進展により郊外に大型店舗が開店したため、既存のスーパーは撤退してしまったという。
 上毛電鉄も、このような厳しい経営環境の中、車内への自転車の持ち込み実だけでなく、戦前製の吊り掛けモーターの電車をイベント時に走らせたりして、利用者を増やす努力は行っている。
 だが最大の結節点は赤城駅であり、東武鉄道の特急「りょうもう」からの乗り継ぎ時間にゆとりを持たせ、5分としてもらえないだろうか。現在の1分では、正直言って無理であり、実質的に30分の待ち合わせと同じである。
 上毛電鉄にとって喫緊の課題は、赤城駅における特急「りょうもう」との接続の改善であり、早期に実現してもらいたい。