急行「きたぐに」さよなら乗車

 先日の3/2に新潟から大阪まで、さよなら乗車も兼ねて急行「きたぐに」のA寝台車下段を利用した。急行「きたぐに」で使用されるサロネ581は、昭和60年3月のダイヤ改正時に急行「きたぐに」を電車化する際に、B寝台車から改造された珍車であり、急行「きたぐに」にしか連結されていない。この寝台車は、プルマン式と言われる真ん中通路の両側に広幅の寝台を配したタイプであり、個室寝台車が主流となった今では寝台特急日本海」と急行「きたぐに」だけにしか連結されていない。それが今回のダイヤ改正で、両列車ともに多客臨に格下げとなり、A寝台車の連結もなくなってしまう。私がこよなく愛した開放型A寝台車が消滅してしまうのである。
 急行「きたぐに」に使用する583系電車は、B寝台車も真ん中通路のプルマン式であるが、下段の寝具は敷布団になっており、A寝台車と同じ布団が使用されている。そのため下段寝台は寝台幅や寝具では、A寝台車の下段と遜色ないのだが、こちらは3段式であるため頭上の圧迫感はある。そして枕が小さいだけでなく、寝台モケットのグレードは下がる。A寝台車の下段のモケットは、トワイライトエクスプレスの“ロイヤル”や、サンライスの“シングルデラックス”で使用される生地が使用されている。サロネ581の下段の寝台幅は、これらの上級寝台よりも広いため、ある面で優越感を感じる。
 3/2は金曜日であったこともあり、2両増結されて12両で運転されており、A寝台車、B寝台車ともに満席であった。グリーン車は、設備的にも中途半端な感じであるため、5割程度の利用率であった。平素は、グリーン車の利用者は4名程度であるため、利用率はまずまずとなる。
 583系電車は、登場から45年が経過するが、星晃氏が設計しただけあり、乗り心地や防音性は良好であった。日本海で使用される24系25形客車に乗車すると、愕然とするだろう。星晃氏は、車両設計に関しては最高の技術者であり、常に「自分が利用者である」ということを肝に入れて車両を設計された。そのため乗り心地と防音性には、細心の注意を払っている。
 583系電車は、全く隙間のない密着式連結器を採用し、電磁直通ブレーキを採用しているため、客車の自動ブレーキと比較して応答性に優れており、14系・24系客車のような前後の不快な動揺はない。防音性に関しても、床に敷かれたコルクが車内の静寂性を生み出している。
 客車のA寝台車は、下段寝台内では棚を作ることができるため、大きな荷物を持った時に重宝できるが、サロネ581
ではそれができない。また客車に備わる寝台内の鏡もないし、更衣室もない。ナロネ21には、更衣室が無かったこともあり、特に不便であるとは感じない。
 25年以上の昔、2段式のB寝台車が羨ましいと思い、時々寝台急行「銀河」ではなく、寝台特急「瀬戸」や「あさかぜ2号」、京都まで出て寝台特急「出雲2・4号」を利用して上京したことがあった。後で、寝台特急を利用するぐらいならば寝台急行「銀河」のナロネ21をもっと利用するべきだったと反省している。20系客車は、「3段式で寝台幅が52cmしかないため、狭くて窮屈である」という指摘が多いが、星晃氏が精魂こめて設計した車両であるため、乗り心地や防音性などの基本設計は優れていた。そのためA寝台車は、快適そのものであった。
 その反省から、大阪〜新潟間で夜行列車を利用する際は、寝台特急「つるぎ」を利用するぐらいならば、急行「きたぐに」のA寝台車を利用しようと考えるようになった。結局、寝台特急「つるぎ」は1度も利用することがなかった。寝台特急「つるぎ」が廃止された後は、目的や予算に応じて、各設備を使い分けていたが、可能な限りサロネ581を利用しようとした。特に583系電車が、多客臨として大阪〜青森間の寝台急行として運転される時は、積極的にA寝台車を利用するようにした。このように急行「きたぐに」は、豪華から節約まで幅広いニーズを満たす列車であったため、年間を通じて安定した高い利用率を維持した。
 だが最近は、ツアーバスの台頭やスキー人口の減少、スーパーホテルの台頭もあり、年々需要が先細っていた。
 GWでは、臨時列車として急行「きたぐに」は運転されるが、下りの新潟着が6:54と2時間近く繰り上げられてしまう。そのため庄内方面へ向かう特急「いなほ」との乗り継ぎが不便になるだけでなく、普通車自由席だけでなく、A寝台車の連結も廃止される。そうなると低廉に夜行列車を利用したい人や、直江津〜新潟間で通勤などで急行「きたぐに」を利用していた人は、不便になってしまう。
 臨時列車に格下げをする前に、閑散期は8両編成(普通車自由席とB寝台車を1両づつ減車)して運転するべきではなかったか。http://www.klasse.co.jp/
 GWの急行「きたぐに」は、B寝台車6両にグリーン車1両の計7両編成で運転される。本来ならば、たとえ座席指定となったとしても、普通車は設定すべきであり、サロネ581もアコモ改善が実施されているため、可能な限り組み込むべきである。
 583系電車は、乗り心地や防音性などの基本設計が優れているため、多客臨で運転される時は、是非とも利用して欲しいと思っている。私も利用する考えである。それが新型寝台電車として、定期急行として復活に繋がるかもしれないからである。