軽微認可への疑問と問題点

 国土交通省が運賃・料金を認可する際、交通事業者(鉄道事業者)が運輸審議会へ諮問を図り、答申を得るのが一般的だが、これらが省略された「軽微認可」という事案がある。例を挙げると九州新幹線新八代〜博多間の特急料金や、山陽新幹線と通しで利用する際に博多で特急料金とグリーン料金が細切れになる制度が挙げられる。
 国土交通省には、「軽微認可」を認める際の明確な基準は特にない。九州新幹線新八代〜博多間の特急料金は、鹿児島中央新八代間の1km当たり特急料金の賃率をそのまま延長したため、「審議会へ諮問する必要なし」ということで「軽微認可」となった。山陽新幹線と直通する際、特急料金が博多で細切れになる件は、「博多で別会社になるから、特に問題なし。国交省としては、利用者が割高になろうが、そんなことは知ったことではない。むしろ問題なのは、同一の鉄道事業者が空港新線などを開業させた際、そこだけ別立ての運賃を適用することである」という認識であり、消費者の利便性という視点が完全に抜け落ちている。私が腸が煮えくり返ったのが、「もう国鉄ではない」として片付けようという姿勢である。利用者からすればJRグループとして考えており、利用者に過度に負担を強いる制度(決め方)は問題ありである。
 運賃制度では、他にも京成上野から北総線を経由した運賃は、京成本線宗吾参道を経由するよりも距離が短いにも関わらず、割高である。北総線の運賃が常識を逸脱した割高さから、このような結果となるが、これも運賃を決める際に消費者視点が抜け落ちていることも要因の一つだろう。
 運輸審議会のメンバーも、国土交通省天下りや御用学者が多く、利用者の方を向いていない。私は、平素から「安定供給」の重要性は認識しており、事業者のダンピング行為など、安売り合戦には批判的な立場であるが、利用者の方を全く見ないことは大問題である。
 消費者委員会や公正取引委員会の監視の目を強めて頂くと同時に、運輸審議会の委員には消費者委員会や市民活動家などの消費者サイドの人材の加盟を痛感している今日である。
 北陸新幹線開業時は、JR東日本JR西日本が直通運転を行い、北海道新幹線開業時にはJR北海道JR東日本が直通運転を行なう。各事業者の境界の駅で、特急料金やグリーン料金(グランクラス料金も含む)が、細切れになることがないように消費者委員会だけでなく、私達利用者も注視する必要がある。