ピーチエアーの誕生とLLCの今後

 3/1から関西国際空港を基点に運航するピーチエアーが就航した。この会社の大株主は全日空であるが、予約の仕方や時期などによるが、関西〜福岡が3,000円台、関西〜札幌(新千歳)が7,000円台であるという。
 これだけを聞くと、「超破格である」と感じるかもしれないが、インターネットではなく電話予約すると1,050円増し、直接空港で予約すると2,100円増しになる。さらに10kgを超える手荷物は1,500円増し、座席の指定は210円増し、シートピッチげ広めの座席は、840円増しになるという。当然のことながら機内食やドリンクは有料となる。機内食は、ギャレーで温めて提供されるというから、ANAスーパーシートよりも優れているかもしれない。
 ピーチエアーが格安運賃を提供できる秘密は、機内サービスを省略したノンフリルサービス(オーディオや機内誌もない)を行う以外に、搭乗手続きも自動チェックイン機で自分で行うなど、極限まで人件費を切り詰めた経営と、他の航空会社よりもシートピッチを詰めて、A320という機材の定員を180名にして、生産性を高めている点がある。そのためツアーバス並みの狭さは覚悟しなければならない。さらにスカイマークなどよりも機材の運航頻度を上げるため、到着から出発までの折り返し時間が25分しかない。そのため乗客が機内にいるにも関わらず、給油を行うという。これに関しては、「安全性」を指摘する専門家もいる。
 それではピーチエアーの運航開始により、他の航空会社や鉄道・バスは影響を受けるのかと言えば、ピーチエアーの利用者は時間的な制約がないレジャーや帰省客に限定されるため、航空会社のお得意様であるビジネスマンは利用しないだろう。ビジネスマンの場合、会社から出張経費が支給されるだけでなく、予備機の無いピーチエアーは、エンジンなどのトラブルが生じた時に臨機応変の対応ができないことが挙げられる。また関西国際空港発着であるから足場が悪く、ビジネスマンにはネックとなる。大阪〜福岡間であれば、都心部に近い新幹線は魅力である。
 大阪〜札幌間は、ほぼ航空機の独壇場であるが、トワイライトエクスプレスを利用する人はピーチエアーなど、見向きもしないだろう。トワイライトエクスプレスは、車窓から日本海に涼む夕日や噴火湾に登る朝日を見ながら、優雅でゆったりとした列車の旅を楽しむ目的から誕生した列車であるため、利用者層が全く異なる。
 トワイライトエクスプレスのターニングポイントは、北海道新幹線の新函館延伸時であろう。これがクリアされれば、新型車両を導入すれば良い。
 ピーチエアーは、「格安な運賃」で注目を集めており、レジャーや帰省客をターゲットにしている。だが「子供運賃」が設定されていないため、下手をすると既存の航空会社を利用した方が割安になるかもしれない。
 格安航空会社(LCC)を含めた国内航空であるが、少子高齢化や新幹線の延伸、さらには今後は道州制による地方分権が進むことが予想されるため、国内航空需要が増える要因は少ない。そのため短距離国際線を運航することで活路を見出すしかないだろう。これはスカイマークスターフライヤーも、Air Doも同じである。
 オフビーク時の格安時の運賃だけを提示するピーチエアーは、「はなまるうどん」のような存在である。基本は素うどんであり、各種トッピングを行うとそれなりの値段になる。使用する際は、その点を考慮する必要がある。
 ノンフリルのピーチエアーが、どこまで定着するか今後を見守りたい。