周遊きっぷの大幅整理

 今回のダイヤ改正は、「非常に寂しい」の一言に尽きる。寝台特急日本海」、急行「きたぐに」の臨時列車化や100系300系、特急「あさぎり」の371系や20000系の引退だけでなく、新幹線「こだま」から車内販売が無くなるなど暗い話題ばかりであった。その陰で忘れ去られているが、周遊きっぷも大幅に整理された。
 周遊きっぷは、それまでのワイド周遊券やミニ周遊券、一般周遊券などを統合する形で、1999年に誕生したのだが、誕生した当初から使い勝手の悪さが指摘されていた。
 先ず発券に時間を要するようになった。従来のワイド周遊券とミニ周遊券は、レディーメイドであったため、窓口へ行けば直ぐに発券してもらえた。だが周遊きっぷは、行きの経路とゾーン券、帰りの経路を用紙に書かなければならず、発券に時間を要するようになった上、往路・復路の割引率が2割であるため、お買い得とは言えない。
 またゾーン券が指定する範囲では、特急列車の自由席が乗車できるようになった反面、ゾーン券の有効期間が4〜5日程度しかない上、エリアなどが狭くなり、従来のワイド周遊券やミニ周遊券よりも利用価値が少なくなった。
 かつての北海道ワイド周遊券などは、有効日数が20日もあったため、夏休みなどはこれを利用して訪問する人が多かった。私もその1人である。東京までは、静岡から急行「東海」を利用し、上野からは急行「八甲田」や「津軽」を利用し、青函連絡船青函トンネル開通後は、急行「はまなす」)で北海道に渡り、夜は北海道内で運転されていた急行「利尻」「大雪」「まりも」の自由席を宿代わりにしたものである。このようにワイド周遊券などは、利用価値が高かった。
 周遊きっぷで厄介なのが、新幹線を利用するか、在来線を利用するかで、ゾーンの入り口や割り引率などが異なってくるのである。東京ゾーン券の場合、在来線ならば大船が入り口になるが、新幹線では新横浜か東京となる。もし在来線から新幹線に変更したい場合などは、清算を行わなければならず、厄介極まりない。
 ワイド周遊券やミニ周遊券では、このような問題もなく、どちらを利用しても良かった。
 そのような使い勝手の悪かった周遊きっぷであるが、今回のダイヤ改正から大幅に削減されてしまった。さらに噂では、国鉄時代のヒット商品である「青春18きっぷ」の廃止が検討されているという。JR側の言い分は、このような低廉な乗車券で利用してもらって利益率が低いのが理由のようだ。
 「利益率が低く、手間が掛かる」という理由で何でも廃止するというのは、如何なものだろうか。青春18きっぷは、JR東海の初代社長であった須田寛氏が国鉄の旅客局長であった時代にお作りになられた企画切符であり、国民の隅々まで浸透している人気乗車券である。この乗車券があったため、老若男女問わず鉄道旅行を楽しむ風潮が維持されている。
 そのように考えると、駅員の対応は無愛想であったかもしれないが、国鉄時代の方がサービスは良かったかもしれない。JR各社は、たとえ利益率が低くても、周遊きっぷ青春18きっぷのような企画乗車券を大切に扱って欲しい。このような地道な努力が、鉄道の利用者維持に繋がるのだから。