列車の供食サービス

 『新幹線VS航空機』や『ブルートレイン誕生50年』を購入して頂いた読者の方々から、「食堂車についてあまり深く書かれていないが、食堂車は重要だと思っていないのか」という質問がありました。
 『新幹線VS航空機』では、新幹線と航空機の競争を中心に、新幹線の開業及び延伸により、交通地図がどのように塗り変わるのかに焦点を当てていたため、食堂車に関する記述はあまり取り上げませんでした。
 筆者自身は、列車の供食サービスは重要だと思っており、ブルートレインなどのような長距離列車では、不可欠なサービスだと考えています。「北斗星」「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」のような列車に乗車すること自体を楽しむ列車であれば、豪華なメニューを提供することも良いと思いますが、もしカートレインなどを復活させるとなれば、メニューは絞り込む代わりに、もう少しリーズナブルな価格であることが望ましく、夕食が2,500〜3,000円程度、朝食が1,500円程度の食事が良いと考えています。カートレインであれば、夕食や朝食を込みで販売すれば良いと考えている旨は、『ブルートレイン誕生50年』の6章に書きました。
 「サンライズ瀬戸・出雲」ですが、東京発が22:00と遅く、高松着がAM7:20頃であるため、下車してから食事を採ってもらっても良いと思います。問題となるのは「サンライズ出雲」ですが、上りの出雲市の発車が19:00頃であり、下りの出雲市着が9:50過ぎであるため、食事の時間帯に掛かってしまいます。しかし食堂車を設けると車両の共通運用などが組みにくいため、岡山〜出雲市間で車内販売を充実させて対応すれば良いと思います。
 それでは新幹線の場合ですが、東海道・山陽新幹線は、東京〜博多間で「のぞみ」を利用しても5時間掛かります。東北新幹線の場合、東京〜新青森間で「はやぶさ」を利用しても3時間10分ですが、2015年には新函館まで延伸されます。そうなると乗車時間は、4時間を越えることになり、食事の時間帯に掛かることになります。
 食堂車は、地上にある調理施設から車内へ食材などを積み込まなくてはならないため、その手間が掛かります。また混雑すると自由席代わりに使われるため、客の回転が悪くなるリスクがあり、業者も入りたがりません(担当したがらない)。
 以前、新幹線に設けられたカフェテリアは、メニューは豊富でしたが、スーパーのお惣菜コーナーのような雰囲気であったため、長続きしませんでした。駅弁では、味気ないのも分かります。
 そこで筆者は、機内食スタイルを考えています。これなどは欧州の列車などで実施されており、車内では暖かい食事が提供され、乗客(1等車)に好評です。そのような方式を実施するとなれば、航空機のギャレーのように機内食を暖める設備と、料理を配るカートが必要になります。欧州の1等車には、しっかりしたテーブルが備わっており、ユーロスターやスペインのAVEなどは、テーブルクロスが掛けられて、国際線のビジネスクラス並みの食事が提供されます。
 欧州の1等車は、食事代込みの運賃となっていることが多く、日本では“グランクラス”が軽食やドリンク込みの料金となっています。だがグリーン車で、食事代込みの料金を実施することは難しいでしょう。
 日本で機内食スタイルの供食サービスを実施するとなると、普通車では多客期は通路にまで立ち客が出るため、グランクラスグリーン車に限定せざるを得ないでしょう。幸い、グランクラスグリーン車には、料理を載せれるしっかりとしたテーブルがあります。国鉄時代にグリーン車へのシートサービスを試験的に実施していたが、これは100系グリーン車には、しっかりとしたテーブルが設けられたことからでした。
 グランクラスグリーン車で、機内食スタイルの食事を提供するとなれば、メニューは2〜3種類ぐらいに絞り込むと同時に、朝食で1,500円程度、昼食・夕食で2,500〜3,000円程度とすれば良いと考えます。食事の内容は、国際線のビジネスクラス並みとし、前菜とメインデッシュが載ったトレーを最初に配り、その後でデザートとコーヒーが載ったトレーを配るようにすれば良いだろう。ユーロスターの1等車なども、このようにサービスされています。
 グランクラスグリーン車機内食スタイルの食事を提供するとなれば、売れ残りを防ぐためにも、乗車日までの1日前までには、みどりの窓口で予約するようにしたい。機内食は、一度凍結させた料理を機内で解凍して提供している。そのためそのようなノウハウなどがある、TFKなどの機内食製造会社に担当してもらう方法もある。
 2015年には、新幹線が新函館に延伸され、JR北海道も独自の車両を導入するという。グランクラスを継続するだけでなく、機内食スタイルの食事の提供を導入するなど、新たな供食サービスについても、検討してもらいたい。