近鉄内部線・八王子線の活性化

 「近鉄内部線・八王寺線が廃止させるのではないか」という噂がある。理由として、車両や設備が老朽化している上、年間の赤字額が2億7,000〜8,000万円にも上がることが理由らしい。まだ近鉄は正式に「廃止」を公表していないし、大塚良治湘北短期大学准教授による三重県庁および四日市市役所でのヒアリングに同行したが、そのような話は出ていないという。
 内部線・八王子線は、特殊狭軌という762mmゲージを採用しているため、そのようなゲージを採用している鉄道会社は、三岐鉄道北勢線を除けば黒部川渓谷鉄道しかない。内部線・八王子線で使用される車両は14両あるが、付随車や制御車は昭和20年代に製造された車両を、昭和57年頃にリニューアルしているため、相当老朽化が進んでいる。その上、特殊狭軌であるため、冷房の設置が難しいため、他の公共交通が冷房完備であるにも関わらず、未だに非冷房である。
 私が入手しているデーターによれば、2009年度の内部線・八王子線の年間の輸送人員は約362万人であるから、1日当たり1万人が乗車している。
 収支状況であるが、2010年度は収入が2億5,000万円であるのに対し、経費が5億2,100万円を要しているため。経常損益は2億7,100万円の赤字となる。この場合の費用の内訳が公表されていないため、本当に5億2,100万円も要しているのかどうか分からない。たとえば四日市駅のごみの処分費や光熱費などは、名古屋線湯の山線側で落とすのか、それとも内部線・八王子線側で落とすのかにより、大きく変わってくる。
 ゆえに現時点では、経費に関しては「不透明である」と言わざるを得ない。さらに近鉄内部線・八王子線を乗車して赤字額が年間で2億8,000万円程度にまで膨らむ理由が分かった。

 その理由として、以下のことが挙げられる。
①運賃の取りこぼしが目立つ
②内部駅の駅舎に駅員が2名(社員)も配置されている
③経営の苦しい地方民鉄で行っているような、駅構内への広告の募集を行っていないだけでなく、車体への広告募集も行っていない。そして『地域で守ろう!鉄道・バス』(学芸出版社刊)でも書いたのですが、ネーミングライツや枕木オーナー制や吊革オーナー制の採用を行っておらず、新たな収入源を確保する意思がない

①に関しては、四日市と内部以外は無人駅であるにも関わらず、全駅で全扉を開けているため、無賃乗車が目立つ。一番後ろの車両の後ろ扉から乗車させるようにして、運転手の真後ろの扉で運賃を支払って降車させるように改める必要性を感じた。

 赤字を減らすのであれば、内部駅の傍にある山中胃腸科病院にも、「協賛金」という形で出資して頂くのが良いと思います。
 駅の傍に病院や公民館、図書館、などの公共施設や高齢者用の住宅とスーパーマーケットなどを誘致するようにすれば、さらに利用者の増加が見込める状況にある。

 内部線・八王子線の沿線は、住宅地でもあり、かつ人口密度も高い。もしこれをバス化してしまうと、並行する国道1号線の渋滞に拍車を掛けることに繋がる。内部〜四日市間のバスと鉄道のサービスの比較であるが、運賃ではバスの方が若干高く、所要時間も国道1号線の渋滞により、鉄道の方が早いという。ただ夏場は、内部線の車両に冷房がないため、バスに流れる傾向にある。

 私が内部線・八王子線に乗車して感じたことですが、車両が老朽化しているだけでなく、不採算路線用の車両であることから、1ユニットが1M2Tと電動車の比率が低いため、加減速性が悪く、線内で最高速度とされる45km/hで走れる区間は、四日市〜赤堀間ぐらいしかない。カーブ区間にもカントが無いため、35km/hに減速しなければならない。
 内部線・八王子線は、鉄道として存続させる(存続させなければならない)路線であるが、車両や設備の老朽化を抱えているため、抜本的な改良が必要になるだろう。新車を導入しなければならないが、2M1Tの3両ユニットとして加減速性を向上させ、カーブにカントを設けたり、20〜25km/hに制限させている駅構内への進入ポイントを40km/h用への変更や軌道へのバラストの増加と中古の50kgレールへの交換などを行う必要がある。
 現在、四日市〜内部間は17分であるが、これらの改良を行うことで14分としたい。
 駅と関連するが、駅舎内に柵が設けられている上、段差があるため、ベビーカーや車椅子の人は利用しづらい。駅舎内のバリアフリー化と並行して、駐輪場を整備したり、路線バスとの結節を強化させたい。それには駅舎の位置を動かすことも検討する必要があるだろう。
 内部線・八王子線は、鉄道として存続させるべき線区であり、沿線の人口も多いため、利用者を増やすことは可能である。そのため近鉄では、①運賃の取りこぼしの減少、②駅構内や車体への広告誘致、③ネーミングライツ・吊革オーナー・枕木オーナー制を採用して、増収を図る必要がある。
 内部線・八王子線に乗車して、近鉄の経営努力の不足を感じた。近鉄の努力に期待したい。

参考:『地域で守ろう!鉄道・バス』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1296-5.htm