東北新幹線開業30周年・山形新幹線開業20周年を記念して

 今年で東北新幹線開業30周年、山形新幹線開業20周年になる。秋田新幹線も開業15年である。このように今年は、新幹線に関しては記念すべき年である。東北新幹線に関しては、オイルショック後の物価高騰や土地買収の遅れなどから、大宮〜盛岡間の暫定開業となった。そのため新幹線の利用者は、大きな手荷物を持っていることが多いため、京浜東北線などの電車に乗車させることはサービス上、望ましくない。そこで上野〜大宮間は、新幹線リレー号を設定して対応することになった。
 当時の東北新幹線の最高速度は210km/hであり、かつ大宮暫定開業であったため、東京(上野)〜盛岡間の所要時間は3時間50分程度を要した。それでも在来線特急時代と比較すると、所要時間が約半分になったのである。
 東北新幹線が開業した当初は、「雪に対して大丈夫なのか」という心配もあったが、東海道新幹線とは異なり、積雪の多い区間スプリンクラーを設置する以外に、先頭車にはスノープラウを設け、少々の積雪があっても吹き飛ばしてしまうことができるようになった。さらに全車ボディーマウント構造を採用し、主要機器類は車内に機械室を設置して対応するようにした。その結果、雪による遅延はほとんどなく、安定した輸送能力が維持された。
 1985年3月14日のダイヤ改正では、悲願の上野乗り入れが実現すると同時に、「やまびこ」の最高速度が240km/hに引き上げられ、上野〜盛岡間は最速列車で2時間56分と、3時間を切るようになった。
 国鉄の分割民営化後は、スピードアップよりも輸送力増強(大量輸送)に力を入れるようになり、全車2階建てのE1系E4系が導入された。これらの新幹線が導入された背景として、バブル期に地価が上昇して、那須塩原上毛高原などに自宅を購入する人が増え、新幹線通勤が一般化したことによる。スピードアップに関しては、E2系を用いて最高速度を275km/hまで引き上げ、2011年3月5日のダイヤ改正ではE5系を使用した「はやぶさ」では、最高速度300km/h運転を行う。2015年の新函館(北海道新幹線)開業時には、最高速度を320km/hに引き上げる計画がある。
 一方の山形新幹線であるが、こちらは奥羽本線の福島〜山形(現在は新庄)間のゲージを標準軸に改軌を行い、新在直通が可能な車両を開発して東京〜山形(現在は新庄)間を直通運転を行っている。そのため福島〜新庄間や盛岡〜秋田間には、従来型の新幹線車両は入線できない。東京〜山形間は、乗り換えの解消と在来線区間の踏み切りの改良などにより、所要時間を30分程度短縮した。「山形新幹線」と言われる福島〜新庄間は、正式には在来線の高速化であり、新幹線ではない。
 このように高速鉄道が発展して便利になった一方、その弊害も問題視されるようになった。国鉄の分割民営化後は、「JRを第二の国鉄にしてはならない」という名目から、赤字必死の並行在来線をJRから切り離しても良くなった。そのため新幹線が開業すると、並行在来線区間第三セクター鉄道へ移管されてしまう。これまでしなの鉄道IGRいわて銀河鉄道青い森鉄道肥薩おれんじ鉄道が、並行在来線の受け皿として設立され、主にローカル輸送を担っている。第三セクター鉄道に移管されると、運賃が大幅に値上がりする。特に通学定期の値上げは顕著である。さらにIGRいわて銀河鉄道青い森鉄道は、県境で会社が分断されるため、その区間で運賃が細切れになってしまう。
 一方のミニ新幹線と呼ばれる山形・秋田新幹線の場合は、ゲージが変わるため、他の在来線との直通運転ができなくなるデメリットがある。それゆえその区間だけが孤立してしまう。
 ミニ新幹線では以上のような問題があるため、フリーゲージトレインを活用する案が急浮上している。候補は、長崎新幹線肥前山口諫早間や、北陸新幹線の大阪〜敦賀間が該当する。北陸新幹線の大阪〜敦賀間は、東海道新幹線への乗り入れが難しいことや、湖西線が高規格な在来線であるため、160km/h程度まで最高速度を上げられることが理由として考えられる。ただ敦賀から先は、フル規格の新幹線に乗り入れるとしても、この区間は豪雪地帯であるため、冬場は雪が付着してゲージが円滑に転換できるかどうか、クリアすべき課題はある。
 北陸新幹線の金沢開業時の場合、新潟県富山県、石川県と3つの県に跨るため、県境を境に3つの第三セクター鉄道に分かれる計画である。ここも旧東北本線IGRいわて銀河鉄道青い森鉄道)と同様に、旅客輸送だけ見ればローカル線であるが、貨物輸送に関しては幹線である。それゆえ並行在来線という制度には、総合的な視点から交通・物流を見るという視点が欠如しており、インフラは各県が担当し、列車運行はJRが担うようにするべきだろう。
 東北新幹線開業30周年・山形新幹線開業20周年を迎える今年、今後の高速鉄道のあり方を見つめ直す機会ではなかろうか。