イールドマネジメントを活用したブルートレインの活性化

 昨今LCCが何かと話題になっている。7月に成田〜関空間に就航するジェットスタージャパンは、片道5,000円台の運賃を提示している。東京〜大阪間を新幹線の普通車指定席を利用すると片道14,000円程度であるから、ジェットスタージャパンの運賃は新幹線の1/3であり、新幹線から航空機へのシフトが心配されるようにも思える。
 だが新幹線の利用者はビジネスマンであるため、足場や利便性を重視する。ジェットスタージャパンが発着する成田や関空は、都心部から遠くて1時間程度要するため、飛行時間に都心部〜空港間の所要時間および搭乗手続きの時間を加味すると、新幹線よりも所要時間を要することになる。そのため迎え撃つJR東海は、特にジェットスタージャパンに脅威を感じてはおらず、様子見といったところだろうか。

 LCCというと、「安かろう、悪かろう」というように思うかもしれないが、決してそうではない。確かに機内におけるドリンクやオーディオサービスなどは実施されない上、シートピッチを詰めているため、詰め込み輸送を行っている印象はぬぐえない。発券も、インターネットによる予約が中心となるため、チケットレスとなり、当日はクレジットカード持参となる。これは格安のツアーバスとは異なり、プリンターの調子が悪くてプリントアウト出来なくても、クレジットカードを提示すれば搭乗が可能となるため、利用者に対する信頼度は高い。
 LCCは格安な運賃を提示しているにも関わらず、高い利益率を誇るのかと言えば、徹底したイールドマネジメントにある。「イールド」とは、提供座席マイル当たりの収益である。LCCは、イールドを最大にするようにマネジメントを行っている。つまり時間的制約の少ない利用者(帰省客やレジャー客)は、2カ月ぐらい前に購入してもらうことで割安な運賃でサービスの提供を行う代わりに、直前に出張などが入るビジネスマンなどには正規運賃(割高運賃)でサービスの提供を行う。航空機の座席は、通常の物品とは異なり、在庫が効かない。つまり指定された日時の便の売れ残った座席は、ドアを閉めて出発してしまうと価値がゼロになってしまう。そこで航空会社は、少しでも収益を得るために価格設定に工夫を凝らすことで、イールドを最大限にするようにしている。

 航空機と比較してイールドマネジメントが遅れているのが鉄道であり、その中でもブルートレインなどは最たるものである。寝台料金に対する規制は、1999年に「届出制」といって鉄道事業者が届け出た料金で営業ができるように規制が緩和されたにも関わらず、開放型のB寝台車は未だに通年6,300円である。複数の事業者に跨って運行するブルートレインは、相手側の事業者が値下げに反対すると実施出来なくなる点は否めない。だが寝台特急「あけぼの」は、全区間JR東日本の管内を走行するし、急行「はまなす」あれば、函館〜札幌間はJR北海道の管内を走行するため、下りの函館から札幌までは、寝台料金を値下げすることは可能である。急行列車の指定席料金は、JR北海道内は通年で310円のため、函館〜札幌間は割安となっている。
 開放型のB寝台料金の6,300円はビジネスホテルと比較すれば、設備の割には価格が割高であり、上段で3,500円、下段が4,000円程度が妥当だと思っているが、閑散期などは売れ残ってしまう寝台を極力なくすために、LCCが導入しているイールドマネジメントを導入する必要がある。1か月前の10:00からみどりの窓口で販売になるが、インターネットを活用して2か月前から販売を行うようにしたい。自社のホームページにアクセスをして2カ月前に購入すれば、上段が2,500円、下段を3,000円程度で提供しても良いだろう。GWやお盆、年末年始の多客期は、通常の価格(上段3,500円、下段4,000円)で販売するようにしたい。

 寝台特急「あけぼの」は、B寝台“ソロ”などは人気があり、こちらの利用率は年間を通して7〜8割程度の利用があるが、開放型のB寝台車は金曜日や多客期を除けば閑散としている。寝台車で空気を運んでも増収にはならないため、JR東日本も自社のHPで割り引いて販売を行った方が増収になるだろう。
 ツアーバスは安いかもしてないが、2〜3時間ごとにトイレ休憩があるため、熟睡することはできない。また高速道路の継ぎ目を走行する際の騒音や衝撃もあるため、居住性では鉄道よりも完全に劣る。さらに先日も書いたが、ツアーバスは忘れ物などのトラブル発生時のグランドサービスが全く駄目である。その点で鉄道は、ブルートレインが停車するような駅には駅員がいるため、早急に忘れ物に対しても対応してもらえる。割高な価格は、グランドサービスの費用であると考えても良いだろう。
 LCCはイールドマネジメントに長けており、鉄道特にブルートレインに対しては、このように利益を最大にするイールドマネジメントの必要性を痛感しておる。試験的に寝台特急「あけぼの」や急行「はまなす」の函館〜札幌間で実施してみることを提案したい。