ツアーバスの規制強化

 国土交通省は、6月27日に夜行ツアーバスの運転手の1日の走行距離の上限を、400kmまでに制限することを決めた。これは今年の4月20日未明の関越自動車道で起きた高速ツアーバス事故が原因であり、疲労がたまる夜間の長時間運転が安全性低下の背景にあると考え、再発防止策として実施する。400kmを超える場合は、2人乗務を義務付けられている。
 但し新基準は高速ツアーバスに限定した緊急的な措置である。これから乗客が増える夏休みを控えていることもあり、新基準は7月中旬から適用する。もし基準に違反した場合は、警告や車両の使用停止などの行政処分とするという。だが路線バスを対象外とすることは公正性に欠けるのではないだろうか。路線バスを運行する事業者は「正義」であるとは限らない。筆者自身は、「ツアーバス」というスタイルを問題視しており、移行期間を経て「路線バス」に昇格させるようにするべきである。
 ツアーバスと路線バスを乗り比べると、ツアーバスはウイラー・トラベルなどから委託を受けて運行しているため、「運んであげている」という意識があるのか、「自社のバスである」という意識が低い。一方の路線バス事業者の場合、自社の看板を背負って走っていることもあり、乗客に対するサービスや配慮が感じられる。先ず降車時に「有難うございました」という挨拶がある。
 そのようなこともあり、路線バスに昇格させて、自社で車両や運転手も抱えて運行させる方が望ましいと考える。
 ツアーバス事業者の運転手が事務的な対応(降車時のお礼も無い)しか出来ない理由として、中には期間限定で、かつ保険などにも入らせずに使い捨ての安い労働力として扱われている現状も無視できない。
 さらに東京〜名古屋間の場合、約360kmと400kmを切ることになるが、運転手の披露防止も兼ねて、途中で1時間程度の仮眠時間を設けても良いかもしれない。東京を22:30に出発し、名古屋に6:30に着くようにすれば良いだろう。乗客にとれば、運転手の仮眠時間は熟睡に繋がるためサービスは向上する。
 だが現在の「ツアーバス」という形態では、時間単位でリース料の契約を行っているため、少しでも定刻よりも早く到着させようとする行動が目立つ。
 路線バスの場合、距離的(700〜800km)な関係から夜行限定で運行している車両も多い。このような路線の場合、遅延と車両の清掃や整備などを考慮すると、ほぼ夜行限定で使用せざるを得ない。
 1人乗務に関するが、JRバス関東や東海は国鉄時代の名残もあり、三ケ日で運転手の交代は継続する。だが他の路線バス事業者も、極力これに準じて欲しい(共同出資という形で、バス運転手の休憩場も兼ねた中継場を整備する)。
 今回の規制強化は、ツアーバスだけに限定していることには不満が残る。将来的には、「ツアーバス」という形態を廃止し、路線バスへ昇格させるようにしたい。路線バスは「許可制」であるから、安全性やサービスに問題がある事業者をふるい落とせると同時に、需要の多い部分だけに参入するクリームスキーミング行為が排除され、路線バス事業者の生活路線の維持に繋がるだろう。運転手の健康上の問題および安全性、交通市場のバランスにも考慮して、価格は少々上がっても安全運行を優先して欲しいものである。