沖縄の公共交通(路線バス)事情

 先週の7/15〜7/16の2日間、沖縄国際大学で交通権学会の全国大会が開催されました。私は、「二部料金制による公共交通(路線バス)の維持に向けた課題」というタイトルで報告を行いました。
 沖縄への訪問は、2009年の第7回バスマップサミット以来、3年ぶりとなりますが、モノレールの豊島駅を降りて沖縄国際大学へ向かうため、路線バスに乗ろうとした際、路線バスの扱いの低さに愕然としました。
 沖縄は、戦後、米国の統治時代が続いたため、完全なクルマ社会になっており、路線バスは慢性的な赤字経営を強いられています。そのため内地からの都落ちした車両が多く使われていますが、それだけでなくモノレールの駅前では、タクシー乗り場の方が駅の近くに設けられており、路線バスに乗ろうとすれば、300mぐらい歩かされました。内地から都落ちしたバス車両も、東北で普及しているトップドアタイプの車両が多く、センタードアが設けられていても、その扉は使用されることはなく、そこには座席が設けられています。トップドアから乗車する際に、運賃箱付近に設けられた整理券発券機で整理券を受け取ります。利用者が少ないと言えばそれまでですが、利用者からすれば降車客と乗車客が狭い扉から一緒に乗降することになるため、乗降しづらい面はあります。
 沖縄県では、200m離れた場所へ出掛ける場合であっても自家用車を利用する傾向にあり、自家用車を持っていないか、飲酒などのために復路は運転出来ない時などは、タクシーで出掛けるそうです。タクシー料金も内地と比較すれば安く、初乗りが480円程度です。それゆえタクシーは、気軽に使われている感じがします。
 沖縄県で唯一の鉄道であるモノレールですが、これは主に観光客などが使用します。地元の人にとれば、3階までの昇降が大変なため、空港へ行く際などを除くと、あまり定着しているとは言えません。しかし牧志駅などの周辺では、新規にビルや高層マンションの建設が進むなど、徐々にではあるが駅を中核とした街づくりが始まりつつあるように感じました。
 沖縄県が完全なクルマ社会である要因の1つに、沖縄県は日本一自転車の利用が少ない県であることが挙げられます。これは平均気温が高いこともありますが、那覇市内は案外起伏が多く、自転車利用に適していないという地勢的な要因もあります。それが証拠に、台湾は沖縄よりも南にあるにも関わらず、自転車レーンや駐輪場の整備などが進んでいます。世界最大の自転車メーカージャイアントがあることも影響しているでしょうが、台北市高雄市は、那覇市よりも起伏が緩やかです。
 バスの利用者も減少傾向にあることから、以前紹介したようなラックバスを導入するのが良いのではないでしょうか。車内への持ち込みを認めるには、センタードアを設けた車両に限定しなければなりません。その際は、その部分の座席は撤去することになります。ラックバスの導入や、バスの車内に自転車の持ち込みが可能になれば、下り坂は自転車を利用するが、上り坂はバスに自転車を積み込むという需要が発生します。これは群馬県滋賀県でも、実証されています。
 過度な自家用車の利用を控え、バスへのモーダルシフトを推進させるためにも、ラックバスの導入や、車内への自転車の持ち込みを認めて欲しいものです。