ようやく実現した「ツアーバス」の安全規制強化

 2002年2月の道路運送法の改正により、ツアーバスという形態の輸送手段が登場した。東京や大阪などの大都市を起点に、夜間に高速道路を走行して目的地を結ぶ一種の夜行高速バスであり、年間で600万人が利用するまでに成長した。従来の高速バスは、「路線バス」として道路運送法で監督されるが、ツアーバスは旅行商品と認知されているため、旅行業法が適用されていた。そのため運賃・料金はもちろんであるが、運行経路なども届け出る必要もないため、路線バスよりも格安な運賃が提供できることから、公正性は欠けていた。
 ところが2012年4月29日の未明に発生した関越高速道路におけるツアーバス事故により、国土交通省高速ツアーバスの運行を受託する貸し切りバス事業者298社に対し、重点的に監査を行った。すると8割強の事業者に違反があり、その内の48社は乗務時間が基準を超えるなど、悪質かつ重大な違反を指摘した。その結果、2012年7月18日までに100社超が高速ツアーバス事業から撤退していたという。
 国土交通省以外に厚生労働省も、高速ツアーバスを運行する全国339の貸切バス事業者に対し、緊急監督指導を行っている。その結果、339の事業者の中で324の事業者が、残業代などを払っておらず、法令に違反していた。
 安全規制の強化は、2012年7月20日から実施されている。これにより400km以上を走行する夜行バスは、2人乗務が義務付けられた。またツアーバスを主催する旅行会社は、貸切バス事業者に対して衝突防止装置の導入を求める事例も増えた。そのため経営体力がない零細なバス事業者は、新規投資を行うことが難しく、受託の継続をあきらめるようである。
 さらに7月30日からは、より安全性に対する規制が強化され、運行を委託する旅行会社にも、バス事業の「許可」の修得を義務付けた以外に、委託には国土交通省の「許可」が必要になった。


追加
 ツアーバスの安全規制が強化されたと思ったら、本日の未明に又、ツアーバスがトラックに追突する事故が発生した。幸いなことに死者は出なかったが、31名が負傷したという。バスの運転手は、軽い脳梗塞を患っており、平素から薬を服用していたという。
 この場合、バス会社であるクルージング・ワールドの管理体制が問われる。
 クルージングワールドは、国土交通省が決めた新基準である1日10時間を守っておらず、11時間半も乗務させていたという。
 http://mainichi.jp/select/news/20120802k0000e040222000c.html?inb=tw
 
 バスは、鉄道のようにATSやEB装置などの保安システムが完備していないため、安全性では鉄道よりも劣る。その上、交通渋滞などに巻き込まれると、大幅な遅延も生じてしまう。
 もう一度、夜行列車を見直す時が来ているのではなかろうか。