MM会議に出席しました

 8/3〜8/5まで、富山市の国際会議場で第7回モビリティー・マネジメント会議が開催され、参加しました。初日の8/3は、富山ライトレール試乗会岩瀬浜の町並みの見学会などもあったことから、延べ3日間で380人の参加があったという。富山ライトレールは、日本発のライトレールと言われ、全車が低床式車両で構成される以外に、7編成全てが色が異なるため、どの色の編成に当たるのか楽しみである。
 この富山ライトレールの素晴らしいところは車両ではなく、LRTと街づくりを一体として取組んだことである。沿線に高齢者用の住宅を建て、自家用車が無くても生活できるようしている点を評価したい。また富山市は、公共交通を串に例え、駅やバス停の周辺に住宅地などを開発すれば、市から補助金が支給される仕組みとなっているため、「串とお団子」と例えられる。
 駅やバス停を中心としたコンパクトシティー構想は、富山市のような冬場に積雪がある都市には、除雪費用が少なくて済むため効果的である。郊外へ低密度で広がる都市構造では、除雪費用だけでなく、ゴミの収集も大変であると同時に、生活道路や上下水道の整備など、行政コストが嵩む。また低密度で郊外へ広がる都市構造では、中心市街地の空洞化による地価下落や治安の悪化なども問題点を抱えることになる。
 中心市街地の地価の下落は日本全国で進んでいるが、富山市は地価の下落に歯止めが掛かると同時に、一部地域では地価が上昇に転じたと言う。
 日本各地でLRTを導入する計画があり、「公設民営」の上下分離方式による整備や、「公有民営」の上下分離経営およびLRT建設時に起債が可能となったにも関わらず、計画が進展しないのは、①車線を減らす(交通規制)ことに対する住民のコンセンサスが得にくい点と、②何処の事業者が運営するのか、という2点ではないかと考える。
 LRTを整備するには市民の合意形成が不可欠であり、それにはバスと比較してどれぐらいサービスが向上するのかという点と、LRTが導入されることで自分たちの街や暮らしがどれだけ便利で快適(都心部の賑わいの創出や買い物難民対策など)になるのかという利点を示す必要がある。それゆえ「建設ありき」のLRTでは、駄目であると考えている。
 車依存都市として有名になった群馬県前橋市などは、市内を通るJR両毛線に駅を設けたり、前橋駅前に公共施設(病院、図書館、公民館、高齢者用の住宅など)を設けるなどを行い、“脱クルマ社会”を進める必要がある。
 富山市前橋市のように、公共交通に対する潜在需要と顕在需要の乖離が大きい都市でMMを実施すると効果が最も上がると言われる。MMとは、モビリティー・マネジメントの略であり、自家用車から公共交通への交通行動の変容を「心理学」という手法を用いて実施する方法である。MMの先進地域は、オーストラリアのパースやロンドンであり、心理学的な手法で、自動車利用が1割以上減少しているという。
 日本のMMは、1990年代の後半になって漸く芽生え始め、2006年に第1回MM会議が開催されてから、今年で第7回を迎える。
 筆者は、第2回の札幌から毎回ポスター報告という形で参加しており、すっかり常連となってしまった感がある。今年は、「神戸電鉄粟生線の存続に向けた取り組みと今後の課題」というタイトルで報告を行った。神戸電鉄粟生線活性化協議会は、「おでかけマップ」や「おでかけガイド」を作成しており、これが自家用車から神戸電鉄粟生線へとモーダルシフトに繋がっている。鉄道が存続することは、「交通権」の維持であると同時に、並行する道路交通渋滞の悪化に歯止めを掛けることになるため、最高のMMではないかと考えている。