道路課金のシンポジュームに参加して感じた自動車規制の必要性

 昨日、大阪で道路課金シンポジュームが開催され、参加しました。大阪で開催されているにも関らず、東京などからの参加者が見かけられ、道路課金に対する関心の高さが伺われます。
 民主党は、2009年の総選挙で「高速道路無料化」を掲げて政権を奪取しましたが、高速道路の「有料化」は世界的な趨勢です。民主党は、高速道路を無料化することで、物流コストが下がり、現在は地方港から釜山へ運んで欧州・北米航路で輸出している貨物を神戸港へ持って来ることを期待していたようであるが、それは無理である。韓国の韓進海運を使用した方が運賃が割安である以外に、釜山で積換えても港湾の荷役コストが安いため、荷主は神戸港へ行こうとはしない。
 「無料にする」ということは、「税金で徴収する」という意味である。財源が苦しい今日においては、「増税します」と言うことを意味する。
 民主党が行った高速道路の無料化の社会実験であるが、はっきり言って大失敗であったと言える。この社会実験により、先ずフェリーが大打撃を受け、坊予汽船が経営破綻した。次にトラック事業者や高速バス事業者も、高速道路が渋滞により、荷物の入荷が遅れたり、物流に支障が出た。JRなども、主要幹線の特急列車の利用者が1割程度減少したのである。
 名神高速道路が完成した1963年頃は、日本も未だ貧しかったため、利用者から通行料を徴収して、償還が終われば無料にして開放する考えだった。だが1972年に地方へ高速道路の建設を促進させるため、通行料金のプール制が採用され、儲かっている路線の利益で地方の高速道路の建設費を捻出する方法へと変更された。
 日本の高速道路料金が高いのは、山が多い上に地震が多発するため、トンネルが多くなり、耐震強度の高い構造物を建設しなければならないということもあるが、建設費を通行料で償還する仕組みであるためである。一時期議論され、現在は一般財源化されている道路特定財源は、高速道路の建設には投入されていない。
 筆者は、高速道路は自動車専用道路であるから、自動車以外の利用者を排除できるため、受益者負担の原則に則り、有料で良いと考えている。そして高速道路料金は、建設費を償還する目的ではなく、「高速サーチャージ」というJRの特急料金のような物と考えれば良いと考える。つまり料金を支払うことで「速達性」を得ると考えるのである。
 そうなれば多客期の道路交通渋滞が酷い時はというと、混雑する方向の料金を2割程度値上げして渋滞を緩和して、道路の速達性を維持するようにすれば良かろう。
 これによりピークを避けて帰省するようにするか、嫌な人は公共交通(鉄道など)で帰省するようにすれば良いだろう。
 道路の維持費であるが、現在は電気自動車の普及が進みつつある。電気自動車は電気で走るため、従来のようにガソリンや軽油を消費しない。そのため揮発油税ガソリン税)という制度は、早晩に見直さなければならなくなるだろう。そうなると充電時に課税するか、バッテリー購入時に課税するか、タイヤ交換時などに課税するか、重量に課税するかしなければならなくなるだろう。
 都市内の道路交通渋滞を緩和させるために、ロードプライシングを実施する方法があり、シンガポール、ロンドン、オスロなどで実施されている。ここで得た費用は、公共交通の維持とサービス改善に充当される。英国の高速道路は、無料のところが多いため、ロンドン市内の課金に対する抵抗も比較的少なかったと聞くが、東京で実施するとなると、首都高などもあるため、価格は低くせざるを得ないかもしれない。またある境界を越えたときに課金されるコードン型のロードプライシングは、東京のような大都市では、外部から侵入する車には有効であるが、エリア内を移動する車には課金されないため、ロンドンのようにエリア・ライセンス・システム(ALS)を採用し、エリア内に住居を構える人には、料金を割り引くことが必要ではなかろうか。
 ロードプライシングが難しいならば、パーキング・デポジット・システムを導入し、ただ単に通り抜けるだけの車や、違法駐車の車に課金する方法がある。この方式は、デポジットによるポイントが貰え、これを用いて買い物できるという利点があるため、ロードプライシングよりも受け入れられている。