地域公共交通の存続・活性化には、商工会の役割が重要

 私は、地域公共交通は「インフラ」として重要であると考えており、事業者任せや行政任せだけでは駄目であるということを色々なところで述べてきた。地域公共交通を活性化させるには、自治体や町内会、NPOなどの力が重要であることも述べているが、商工会の力も重要ではないかと気付いた。
 商工会は、地域の商店を中心とした小規模事業者の経営改善と地域の福祉の向上が主な仕事である。過疎地などにおいては、「交通事業」=「福祉事業」であるため、公共交通(乗合バス、鉄道)があることにより、通院や買い物など、高齢者の外出機会を増やし、それが増大する医療費の抑制に繋がるのです。
 政府にとって医療費の削減は喫緊を要する課題であり、消費税を値上げする前に薬価基準を切り下げることは当然ですが、過疎地の公共交通を存続させることで、医療費が抑制できると考えます。その上、高齢者が元気に街中へ出掛けるようになると、買い物や飲食をするため、地域経済の活性化にも繋がり、一石二鳥です。
 かつて商店街は街の顔でありましたが、商店主も高齢化しているため、自分の商売で精一杯のようです。町内会や自治会では、資金的な面もありますが公共交通に対する知識が乏しいのが現状です。交通問題を専門に取り扱うNPOであれば、人材はそれ相応に充実していますが、資金面で苦しいのが実情です。
 そうなれば商工会が、「街づくり・地域振興」という視点から、地域公共交通の活性化に加わり、イニシアティブを取るという方法もあります。商工会であれば、交通事業者だけでなく、行政とのパイプもありますから、「地域協議会」なども開催しやすいでしょう。
 商工会の今後の役割ですが、「地域のシンクタンク」という方向へ脱皮させることが重要だと考えます。交通問題に詳しい人を育てるため、最初は大学教員の指導を受けながら、大学院を修了した人材を採用して育て上げることが不可欠であると考えます。
 大学院修了者が育って来ると、その人を地域公共交通活性化のキーマンとして、活動してもらえば良いでしょう。
 現在、大学院修了者、特に文系は社会から重宝されていません。理系も、企業に入れば大卒に毛が生えた程度という扱いが多いと聞きます。「ニート」が生まれる背景として、努力した人が報われない現代社会にあると言っても過言ではないでしょう。私立大学と言っても、2〜3割は国費(税金)が投入されています。国民の税金で育てた有能な人材が社会で重宝されず、隅っこに追いやられているような社会では、今後の日本の発展が望めないだけでなく、市民も夢や希望を持って生きていける社会にはならないでしょう。
 過疎地では、地元の商工会を地域公共交通活性化を担うシンクタンクへと脱皮して欲しいものです。