厳しさ増した秋田内陸縦貫鉄道‐観光路線化で活路を見出す努力‐

 先日、秋田内陸縦貫鉄道の急行「もりよし」に乗車した。急行「もりよし」と言えば、第三セクター鉄道では珍しく専用の高アコモ車が使用され、車内販売も実施されるなど、秋田内陸縦貫鉄道のクイーンであった。私もそれを期待して乗車したのであったが、車両は一般型に置き換えられ、かつ1両編成となっていた。乗客も、ほとんどんの区間で私を含め2名しかいなかった。3年前に乗車した際は、2両編成の車内に20名以上の利用者がいたため、あまりの落ち込みに愕然としたものである。
 聞くところによると、今年の3月17日のダイヤ改正から1両編成で、かつ一般型車両に置き換わったという。理由は、2両編成で走らせても、乗客は2名程度の日も多かったことによる。それでも車内販売が健在である点がせめての救いであった。鷹巣から角館までは、2時間以上も要するため、車内販売は有り難い。車両以外にダイヤも、鷹巣駅で他の列車との接続が悪い。これも乗車率が低い要因である。
 秋田内陸縦貫鉄道の輸送密度は、2009年度の数値では430人/日であり、この程度であればバスでも輸送できる水準である。沿線は過疎地帯であり、かつ豪雪地帯ではあるが、並行する国道151号線は冬季の除雪も行き届いているため、道路が封鎖されることはほとんどないという。
 だが路線バスは、「不採算」であるという理由から既に廃止になっており、秋田内陸縦貫鉄道が唯一の公共交通となってしまっている。これが廃止されてしまうと、秋田県の内陸部は公共交通空白地域となってしまう。そうなると自家用車を運転できない高齢者の通院の足や高校生の通学の足が奪われることになる。
 沿線自治体などは、秋田内陸縦貫鉄道を存続させるために欠損補助を行っているが、沿線自治体も財政難であるため、赤字額を年間2億円以下に抑えなければならない。沿線の過疎化も進んでいるところに、昨年の東日本大震災の影響も受けて利用者の減少も進んだと言う。年間の赤字額を2億円以下に抑えるためには、減便も検討しなければならなくなるだろう。このままでは乗車率の悪い急行「もりよし」も廃止されてしまうかもしれない。
 秋田内陸縦貫鉄道は、赤字減らしの策として、今年の7月28日から鷹巣駅に駅中ショップ(食堂兼用)をオープンさせている。店内には、地元の名産品などが販売されている。鷹巣駅前の商店街はシャッター通り化しているため、土産物を買う人には貴重な店舗となった。
 さらに昨年社長に就任した酒井一郎氏は「観光鉄道化」を打ち出している。地元と共同で沿線の田んぼに、文字や絵を描く田んぼアートを実施して、その傍を通る時は列車は減速を行う。ただ田んぼの刈り取りが終わると、田んぼアートは終了になると言う。翌年度は、異なる文字や絵になるらしい。それ以外に秋田内陸縦貫鉄道では、沿線の見所(森吉山が見える場所や有名な鉄橋)では徐行(停車するような速度)して、利用者に対するサービスを行うなどの努力は行っている。
 ただ沿線人口の減少などは、自社の努力だけでは食い止めることはできないため、秋田県や沿線自治体と協力しながら、定年退職した人や新規に農業を始める人を受け入れるなど、沿線人口の減少に歯止めを掛ける政策が必要である。
 秋田内陸縦貫鉄道も折角、急行「もりよし」を運行するのであれば、せめて時刻表に「車内販売乗車」などの表記が必要ではないか。そして鷹巣駅の接続改善は不可欠である。増収と利用者への配慮として、是非とも掲載して欲しいものである。