肥薩おれんじ鉄道が来年春に、食堂列車の導入を計画

 筆者は、今まで新幹線やブルートレインの著書およびブログ記事などを書いてきたが、読者の皆様方から「供食サービスにあまり力点が置かれていない」というご指摘を受けたことがある。私自身、供食サービスは「重要である」と考えており、以前、新幹線ではグリーン車ビジネスクラス並みの機内食を提供することを提案したことはある。
 新幹線で食堂車を営業しても、食堂の売上げ1に対し、車内販売の売り上げは4である。つまりワゴン車でビールを売る方が儲かるのである。そのため現在では、寝台特急北斗星」「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」で残るのみとなり、風前の灯となっている。それでも来年からは、JR九州が運行を開始する豪華クルージング列車「ななつ星」に食堂車が連結される。この列車は、最低でも1人当たり15万円以上するため、気軽に利用できる列車ではない。
 そんな中、第三セクター鉄道肥薩おれんじ鉄道が、来年3月から観光列車「おれんじ食堂」を運行する計画である。この列車は、同社が所有する軽快気動車を改造し、2両1編成で運行される。コンセプトは、「九州西海岸を眺めながら、ゆったり、のんびり、スローライフな旅」である。車内で提供されるメニューは、地産地消を目指し、地元産の食材が活用される。これは和歌山電鐡貴志駅で営業中のカフェでも、地元産のいちごなどが使用されており、地域興しに繋がっている。
 肥薩おれんじ鉄道は、九州新幹線新八代鹿児島中央間の開業に伴い、JR九州から経営分離された第三セクター鉄道であるが、優等列車が無くなった上、並行して高速道などが整備されたため、1日当たりの輸送密度は800人/km強と厳しい状態にある。
 筆者も、『新幹線VS航空機』の第5章の「並行在来線」という項目で、肥薩おれんじ鉄道の現状を紹介しており、沿線の海岸美が奇麗であるため、「眺望の優れた車両の導入が望ましい」という旨の提案を行っている。今回の「おれんじ食堂」は、美しい海岸を見ながら、ゆっくりとスローライフを満喫しながらの旅行を楽しみたい人には、打ってつけの列車である。馬刺しやきびなごの刺身を肴に、焼酎を飲むという優雅な旅が実現しそうである。
 肥薩おれんじ鉄道を活性化させるとなれば、やはり大阪〜鹿児島中央間や、東京〜鹿児島中央間のブルートレインの復活が不可欠である。だが来年からJR九州は、「ななつ星in九州」をデビューさせることから、先ずは肥薩線ばかり経由させるのではなく、時々鹿児島中央から肥薩おれんじ鉄道経由で博多へ向かう運行も、実施して欲しいものである。
 肥薩おれんじ鉄道の車窓風景は素晴らしく、豪華クルージングトレインの「ななつ星」の価値を高めることは間違いないだろう。これにより肥薩おれんじ鉄道も活性化する。そして大阪〜鹿児島中央間や東京〜鹿児島中央間のブルートレインを復活させるようにしたい。JR西日本JR九州は、N700系3000番台を共同で開発したこともあり、ブルートレイン用の客車の共同開発を望みたい。
 肥薩おれんじ鉄道は、路線長が100kmを超える長大路線であり、かつ風光明美な海岸沿いを走るため、食堂列車が導入できた。このような列車が導入できる線区は、JR東日本五能線などが挙げられるだろう。今から「おれんじ食堂」のデビューが待ち遠しい。 

追伸:肥薩おれんじ鉄道が導入する食堂車ですが、食事代が4,500円と気軽に利用出来る食堂車ではなさそうです。2号車は、一般(食事は含まない)に販売される座席指定車となりますが、座席指定料金は1,400円と割高です。但しお手拭きとコーヒー、茶菓子などがサービスされるそうです。