三江線のシンポジュームに参加して感じた地元の熱意

 9/17に島根県邑智郡で、三江線活性化に向けたシンポジュームが開催され、参加してきた。三江線は、広島県の三次から島根県の江津を結ぶ路線長108.1kmのローカル線である。本来ならば特定地方交通線に分類されても不思議ではない線区であるが、「代替道路が未整備」という理由から鉄道で存続することになった。沿線は、中国地方の山岳地域であるが、木次線ほど豪雪地帯でもないため、年に10日以上もバスが運休になる日はないという。
 平成4年に1,409人であった1日当たりの乗車人員は、平成23年には236人と、この20年の間に1/6にまで減少している。その内訳であるが、通学が5割強であり、通院が約2割となっている。1993年に江津〜石見川本間で交換設備のあった駅のポイントが撤去され、1閉塞区間(棒線)となってしまったため、列車の交換が出来なくなってしまった。ポイント撤去に関しては反対の署名活動が行われ、4,500名以上の署名を集めている。
 江津〜石見川本間の列車交換設備の撤去に伴い、三江線のダイヤは江津6:00の後は、12:44まで7時間近く列車がないため、各高校が送迎用のスクールバスを運行するなど、独自の輸送手段を提供するようになった。
 JR西日本は、不採算線区に対しては徹底的な経費削減を実施しており、ダイヤを間引く以外に、落石などの土砂崩れが起きそうな場所では、保線などの回数を減らすために、運転手による目視が可能な30km/hへの減速を実施している。その減速箇所が三江線では57箇所もあり、全線の37%を占めている。そのため列車の表定速度は遅く、江津〜三次までの所要時間は直通列車で3時間20〜40分程度要しており、表定速度は30km/h未満である。このような危険な個所は放置されており、JR西日本が単独で改善することは非常に困難であるため、島根県が関与する必要もあるだろう。
 2000年3月に改正鉄道事業法が施行され、路線の廃止が「許可制」から「届出制」に緩和されたため、このままでは
 廃止になると感じた沿線自治体などは、2012年10月1日から2012年12月末まで、バスによる増発の社会実験を行うことになった。島根県は、三江線を「地域の足」と認識しているが、三江線広島県にも跨るため、広島県側の考え方が気になるところである。
 この社会実験は、三江線の廃止を前提にした社会実験ではなく、活性化を目的としているが、先ほども述べたように江津〜石見川本間などの列車交換設備が撤去されているため、列車増発は難しく、バスで社会実験を行うことになった。地元自治体や三江線を守る会では、この実験により利用者が増え、三江線の列車交換設備が復活することを願っている。
 一方、三江線活性化協議会は、JR西日本と共同でバスの増発社会実験を実施する以外に、「神楽キャンペーン」と称して、三江線の各駅に神楽にちなんだ愛称名を付けることになった。平成筑豊鉄道やくまがわ鉄道などは、増収策として駅名を各企業などに売り出すネーミングライツを実施しているが、三江線は神楽が江の川沿いに島根県から広島県に伝搬したという経緯があり、多種多様な神楽が存在することから、神楽にちなんだ駅名を付けることになった。
 さらに神楽とグルメを味わう特別列車の運転も6回予定されている。10/13が「ワイン列車」で、10/27が「地酒&スイーツ列車」、11/3が「神楽列車」、11/10が「酔いどれ地酒列車」、12/8が「ひょっとこ踊り列車」、12/22が「サンタクロース列車」となり、どの列車も車内で神楽の鑑賞と地元の温泉の入浴がセットになっている。
 このように地元にある財(神楽などの伝統文化や温泉、地酒、ご当地グルメ)を活かして、三江線の活性化と地域のまち興しを行って欲しい。
 三江線の問題は、三江線沿線自治体の問題だけではない。もし仮に三江線が廃止されるようなことになると、次は木次線などが危なくなる。そのためにも社会実験が成功して、列車交換設備が復活することを願っている。
 三江線で撤去された列車交換設備が復活すると、朝夕などで増発が可能となり、各学校が運行するスクールバスから三江線へのモーダルシフトも実現するかもしれない。