JALの再上場

 2010年1月19日に会社更生法の適用を受けて経営破綻したJALが、9月19日の朝に東京証券取引所の1部に上場した。経営破綻した翌2月に上場廃止になってから、2年7カ月ぶりの再上場である。売り出し価格は3,790円であるが、取引開始直後に売り出し価格を20円も上回る3,870円の初値が付いた。ライバルの全日空は、200円弱と低迷しているにも関わらずである。
 時価総額は約7,000億円であり、世界的に見てこの金額は米国のFace Bookに次ぎ、今年2番目の大型上場になった。
 株価は初値後、3,905円まで値上がりしたが、利益を確定させる売り注文も出て、午前の終値は3,830円に落ち着いた。それでも時価総額は、全日空の約6,400億円を上回った。
 2010年1月に経営破綻したJALは、企業再生支援機構の下で人員削減や不採算路線からの撤退などのリストラを進めた。機材面では、B747-400などのジャンボジェット機を引退させる代わりに、燃費に優れた250人クラスの中型機であるB787を導入した。この機材を使用して東京(成田)〜ボストン線などを開設した。東京〜ボストン線のような長距離路線は、従来はB747-400などのジャンボジェット機が主流であったが、このような大型機は定員である400人程度を輸送するには効率が良いが、200名程度の需要の路線では非効率であった。
 その点、B787は需要が200名強の長距離路線で使用するのに適しており、全日空は新型機材をPRするために国内便で高頻度運航させている現状と比較すれば、路線に見合った適切な機材運航をしていると言っても良い。
 就航路線であるが、東京(成田)〜ロサンゼルス経由のサンパウロやリオデジャネーロ線などは、不採算であるがメンツで飛ばしていた感が強い路線である。それぞれ週1便程度の運航しかないにも関わらず、全区間が日本人乗務員であり、現地で1週間程度滞在させていたと聞く。ロサンゼルス〜フラジル間は、日本人旅客など殆どいないのだから、ブラジル人乗務員でも充分だった筈で、コスト管理ができていなかった。
 会社更生法の適用により、経営破綻したJALは京セラの名誉会長である稲森氏の指導により、徹底的にリストラを行った。というよりも、会社更生法が適用されると、裁判所の監督下に置かれるため、定められた数まで社員を減らさなければならない。また民事再生法とは異なり、担保権者や株主も更生手続きの対象になる。
 社員、株主、担保権者が痛みを分け合いながら、会社再建を進めた結果、2012年年3月期に1,866億円の純利益を稼ぐなど、業績はV字回復している。
 ただ初値が売り出し価格を上回ったことについては、市場関係者は「リストラと公的支援で高まった収益力を評価する投資家が多い」と話したように、JALの国際競争力が強化されたとは言えない。2012年は「LCC元年」と言われるように、国内ではピーチエアーだけでなく、ジェットスター・ジャパンやエアーアジア・ジャパンなどのLCCが誕生している。これらの航空会社は安かろう、悪かろうではない。さらに業績回復には法人税の減免などの要素も大きく、10年間は免除されるという。
 これに対し全日空は、「JALを優遇しており、不公平である」と反論している。筆者も法人税の免除は2〜3年でよく、これを10年も続けるとJALは大型投資が出来るのに対し、全日空はそれが出来ないため、JAL優位となっていまう。 このように株式の再上場を果たしたJALであるが、10年間の法人税の免除などもある上、東南アジア系の航空会社に対する競争力不足とLCCの台頭もあり、「果たして本当の業績回復か」と、持続性を疑問視する声もある。