寝台特急「あけぼの」のA寝台“シングルデラックス”を利用した際の現状

 11/30(金)に青森から上野まで、寝台特急「あけぼの」のA寝台(シングルデラックス)を利用した。巷では、来年3月のダイヤ改正秋田新幹線E6系が導入され、所要時間が短縮されると、「あけぼの」の利用者が新幹線にシフトして利用が減少するため、存続が危なくなるのではないか?と言われていた。そこで「あけぼの」の現状を見たく、乗車したのである。
 青森発車時は、8号車のゴロンとには6名の乗車があった。A寝台車は、筆者だけ。“ソロ”は1/3程度、開放型のB寝台車は2割程度であった。次の新青森からも乗車があった。新幹線から乗り継ぐ人もいれば、車でアクセスしてきた人もいるだろう。2015年春に北海道新幹線として新函館までの開業が予定されており、そうなれば「あけぼの」と新幹線を乗り継いで函館まで行く人も生まれるかもしれない。
 青森県西部の主要都市である弘前からも10数名の乗車があった。弘前の発車は19:00と高速バス「ノクターン」の22:00と比較すれば早いが、横になって旅行できる寝台車やプライバシーが確保できる“ソロ”は魅力的である。ただシングルデラックスへの乗車はなかった。大鰐温泉では、3〜4名の乗車があり、秋田県に入って最初の停車駅である大館では、10数名の乗車があった。その後、「あけぼの」は、鷹ノ巣二ツ井東能代八郎潟と停車するが、大館を発車してからウトウトとしてしまい、気が付けば八郎潟の手前だった。八郎潟では、乗車は無かったが、その次の秋田からは纏まった乗車があった反面、4号車から数名が下車した。これは上りの「あけぼの」は、「ヒル区間」として青森〜羽後本荘間で立席特急券での乗車を認めているためである。「ヒル区間」や立席特急券については、『ブルートレイン誕生50年]』を参照して頂くと、詳しく説明しているが、「あけぼの」には昼行特急の代行という任務もある。

 秋田発車後の様子であるが、シングルでラックスにも鉄道マニアらしい人が1名乗車したため、筆者を含めて2名となった。ただこの数字は、終点の上野まで変化しなかった。
 反対にB寝台“ソロ”や開放型B寝台車は、6割り程度の乗車率となった。8号車のゴロンとは、8割以上埋まっていた。
 秋田の次の羽後本荘でも10名程度の乗車があった。ただ羽後本庄を出発して暫くすると、列車は急停止した。車掌に理由を聞くと、「鹿を撥ねた」という。安全確認のために30分程度停車した。象潟などの秋田県南部の小さな駅にも小まめに停車して、乗客を拾う。
 定刻よりも30分遅れて23:30に酒田に停車した。ここでは20名程度の乗車があり、「あけぼの」は新幹線や航空機の恩恵に享受しない地域と東京を結ぶ重要な交通手段となっていることを実感する。
 筆者は、この後、熟睡してしまい、4時過ぎにトイレに行きたくなり、目を覚ました。
 車掌に聞いたところ、鶴岡や温海温泉などでも乗車があり、B寝台車は“ソロ”と開放型を含め、ほぼ満席となったようである。ゴロンとも1号車の女性専用車や8号車の一般も含め同様にほぼ満席だったという。ただシングルデラックスは、筆者を含め2名しかいなかったのが残念でならない。
 その後、熟睡とまでは行かないがウトウトとしており、大宮到着20分前の放送で目が覚めた。昨夜、鹿を撥ねたために30分程度遅れて運転していた「あけぼの」であるが、大宮到着前には定時運転に戻っていた。冬場などは、日本海からの強風があるため、ダイヤにゆとりがあることを実感する。
 この時間帯は洗面所が混雑するため、室内に洗面台が備わっている“シングルデラックス”は、ありがたいと感じる。また“シングルデラックス”には、「あけぼの」のヘッドマークがデザインされたアメニティーキットが用意されており、就寝前の歯磨き時などにも重宝できる。
 上野には、定刻の6:58に到着した。「あけぼの」に使用される24系客車は、製造から40年近く経過するが、車内はリフレッシュされているため、古さは感じない。特にA寝台“シングルデラックス”は、1991年にB寝台車の改造により誕生したが、登場時がバブル期であったため、車内はその香りが漂っている。ただサンライズの“シングルデラックス”と比較すると、室内は狭く感じる上、テーブルや洗面台も小さく感じる。サンライズの“シングルデラックス”は、室内の広さは「北斗星」などの“ロイヤル”と比較しても遜色が無く、洗面台や鏡に関しては優れているように感じる。
 ただ24系客車の乗り心地は、お世辞にも良いとは言えない。
 
 車掌に聞いた話では、「あけぼの」は週末などは混雑するらしい。閑散期の平日は、“ソロ”やゴロンとは人気が高く、8割以上が埋まると言う。開放型のB寝台車は、JR東日本が企画乗車券を販売していた時期は、利用率も上がったようであるが、それが無いと3割程度であるという。この場合、上段は実質的に荷物棚として機能しているという。
 ビジネスホテルが、朝食付きで4,000円台で泊まれる時代に、カーテンだけで仕切る開放型B寝台車の6,300円は、確かに高すぎる。筆者は、下段で4,000円、上段は3,500円で十分であると考えている。また以前、ブログで人気のない開放型のB寝台には、LCCが行っているようなイールドマネジメントを導入し、2ヶ月前に事前購入した人に対しては、下段で3,000円、上段で2,500円でも良いという旨を書いた。
 高速バスが快適になったといっても、所詮バスはバスである。寝台車のように完全に横になれる訳ではないため、寝心地では劣る。その上、安い2-2の座席配置の高速バスは、トイレを完備していないことが多く、2〜3時間おきにトイレ休憩で起こされる。

 今後の「あけぼの」への提案であるが、東京〜山形県北部や秋田県南部、秋田県北部や青森県南西部など、新幹線や航空機の恩恵に享受しない地域では、重宝されている。秋田新幹線E6系が登場してスピードアップを実施しても、この傾向は変わらないだろう。そこで車両を新製して、存続させることを提案したい。JR東日本からは、「あけぼの」の将来に関しては、未だ、白紙であるという回答を11月上旬に得ている。

 上野駅が頭端式のホームである上、全線電化区間を走行することから、サンライズのような交直流の寝台電車への置き換えが望ましいが、コスト高になるならば客車でも良かろう。ただ電車、客車を問わず、車両を新製するとなれば、サンライズや「カシオペア」のように全車2階建てを原則として、定員を確保する必要がある。現在の“ソロ”は大変狭く、10時間以上も過ごす設備ではない。その点、ダブルデッカー車であるならば、定員を確保しながら部屋を広くできる。せめて「はやぶさ」「富士」に連結されていた元祖“シングルデラックス”レベルにして欲しい。
 ゴロンとは好評であるため、サンライズのような形で継続すれば良いだろう。A寝台“シングルデラックス”もサンライズぐらいの広さが必要である。1階部分には、B寝台“デュエット”か“ツイン”を設けることで、2人組のグループ客を取り込むことが可能となる。
 開放型のB寝台車であるが、「あけぼの」は昼行特急の代行を行うことから、連結せざるを得ない。この場合、座席としての座り心地の改善と、各寝台内にコンセントを設け、携帯電話の充電が可能として欲しい。これはサービス向上と同時に、高速バスとの差別化である。
 後は、ミニロビーとシャワールームの設置である。ミニロビーやシャワールームは、高速バスは勿論、航空機では絶対に真似が出来ない。ミニロビーには、自販機なども設置してもらえると嬉しい。現在の「あけぼの」は、車内販売すら乗務していないため、ジュースなどを購入して乗車しなければならない。

 以上のことから「あけぼの」には、まだまだ潜在的な需要を掘り起こす可能性があることから、JR東日本も車両を新製して存続させるようにして欲しい。車両の新製費の工面が苦しいのであれば、1口1,000円で寄付を募るという方法もある。どうか前向きに検討して欲しい。

追伸
 JR東日本は、JR九州が来年10月から運行を開始する「ななつ星」の予約が、7倍以上にもなるぐらい好調であるため、「カシオペア」を上回るクルージング列車を検討しているらしいです。
 「ななつ星」の成功を祈願しています。