民主党の「高速道路無料政策」と自民党の大型公共事業復活

 12月16日に衆議院選挙が実施される。今回の選挙は、12の党が入り乱れた混戦であり、かつ第三極が「みんなの党」「日本維新の会」「日本の未来」と3つもある。選挙の争点は、消費税増税の是非、TPPへの加盟の是非、原発を温存するか否かであろう。

 今回の選挙で、「公共交通重視」を明確に打ち出しているのは、社民党共産党だけである。「みどりの風」は、「公共交通重視
」を明確には打ち出していないが、地球環境問題の重視が党是である。党本部で電話で聞くと、「自転車の普及を目指す」とあり、「自民党のように高規格自動車道」ではなく、自転車レーンの整備や自転車道の整備を考えている」とのことであった。
 そのため自転車愛好家などは、比例で「みどりの風」を入れると良いかもしれない。

 3年前の衆議院選挙では、民主党は「高速道路の無料化」「ガソリンなどの暫定税率の廃止」も掲げていた。過去に社民党と共同で交通基本法を提出しているため、公共交通に対する理解もあるが、国民が喜ぶと思ったのか、「高速道路の無料化」と「ガソリンなどの暫定税率の廃止」も掲げてしまった。
 公共交通重視と、高速道路無料化やガソリンなどの暫定税率の廃止は、完全に矛盾する政策である。

 民主党の高速道路の無料化の社会実験は、交通量の少ない路線で実施されたが、評判は決して良いとは言えなかった。トラック事業者は、道路交通渋滞が生じたために、納期が遅れるリスクが生じた。高速バス事業者も、定時運行が出来なくなり、利用者が減少した。深刻なのはフェリー業者であり、大幅な利用者の減少となる事業者も現れ、坊予汽船などは経営破たんしただけでなく、明石海峡フェリーなども「休止」に追い込まれた。
 明石海峡大橋は、自動車専用道路であるため、自転車やスクーターなどは利用出来ず、フェリーを利用していた。それが休止に追いやられたため、これらの方々に支障を来たしている。

 ガソリンの暫定税率の廃止も、これが実施されると、更なる公共交通の利用者減少と、地球温暖化を促進することになってしまう。2012年10月1日から、ガソリン1L当たり0.15円が環境税として課税されるようになった。2025年までにCO2を1990年度比で25%も減らす国際公約を行ったのだから、自動車から公共交通へのモーダルシフトは不可欠である。

 現在はデフレであるため、自民党は10年間で200兆円の大型公共事業を実施すると、公約で掲げている。デフレに陥った責任は自民党にあり、その後も橋本政権、小渕政権、森政権、福田政権、麻生政権で大型公共事業を実施したが、景気が浮上するというよりも、国の借金を増やしただけであった。
 
 自民党が言う、大型公共事業は「高規格道路の建設」である。不採算な高規格道路は、新直轄事業として国が資金を出して実施することになる。このような高規格道路を建設しても、国の借金が増えるだけであり、地域経済は活性化しない。

 「公共事業=悪」だとは思わないが、社会インフラを建設するよりも、先日の中央高速道路のトンネルの天井崩落事故の事例から分かるように、建設よりもメンテナンスの時代になっている。老朽化した橋やトンネル、高架橋が数多くあるが、今後は「完全に撤去」も含め、検討する必要がある。
 首都高や阪神高速の高架橋は、街の景観を大幅に壊している。欧州の先進国で、市内中心部に高規格道路の高架橋が乱立する国は、日本を除いて無いと言っても過言ではない。

 韓国のソウル市では、現大統領がソウル市長であった時代に、老朽化した高速道路を鉄撤去し、清渓川という河川を復元させている。これによりヒートアイランド効果が抑制され、周辺の気温が2℃下がったと言う。

 自民党が単独で過半数を確保しても、デフレ脱却と景気回復は幻想であることを理解して頂きたい。来年夏の参議院選挙では、「緑の党」が参戦して来るため、環境重視と脱原発反戦を掲げる「緑の党」に入れたい。

 追伸:自民党の元首相であった福田康夫氏や中川秀直氏は、今回の総選挙には立候補せず、政界から引退する。しかし息子が同じ選挙区から立候補する。これは世襲である。
 自民党を圧勝させると、直ぐに消費税を10%に値上げして、大型公共事業を実施する。民主党はまだ社会保障に回すだろう。
 自民党へ先祖返りを許してはならない。
 
 20代や30代の派遣社員契約社員の人達は、現状に文句を言うだけでなく、12/16は選挙に行って、非自民に投票することをお勧めする。