安倍内閣の2020年までに、1990年度比でCO2の25%削減を撤回させる計画について

 安倍内閣は、水面下で民主党時代に国際公約した「2020年までに、1990年度と比較してCO2を25%削減する」という約束を撤回させる考えである。このようなことを実施されると困るのが、日本経団連だろう。彼らの言い分は、それによりデフレが酷くなるという。
 しかしCO2を25%削減する努力を行うことで成長する分野もある。再生可能エネルギー関係の分野や、地球環境にやさしい輸送機関である鉄道会社などである。再生可能エネルギーに関しては、2000年頃は世界のトップを走っていた日本も、その後は停滞するようになり、ドイツに水を開けられている。太陽光パネルなどの需要が伸びれば、シャープなどは経営改善が期待できる。また大阪ガスなども、コージェネレーションシステムの販売を促進させることも、エネルギー効率が向上する。
 1990年度と比較して最もCO2を増やした分野が交通分野である。特に2000年代になり、公共交通の規制緩和が進んだため、過疎地の公共交通が廃止され、地方へ行けばクルマしか選択肢がないような状態になっている。
 さらに大店法が廃止され、大規模店舗立地法が施行されたことから、大型商業施設の郊外出店が加速し、中心市街地の空洞化が進んだ。大型商業施設は、建物全体がかつての商店街のような構造であるため、冷暖房などで大量の電力を消費する。

 日本の場合、家電メーカーがいくら省エネ家電を開発しても、自動車中心の交通政策や街づくりが実施されたため、CO2の排出量を増やす結果となった。地方で公共交通が衰退した結果、買い物難民という問題を顕在化させ、このような状態が続くと、寝たきり老人の増加に繋がり、医療費の増加として私たちに返って来る。

 民主党は、社民党などと共同で交通基本法案を国会に提出しているが、自民党の妨害に遭い、廃案になっている。民主党政権は、確かに至らない点は多数あったが、母子家庭への加算や公立高校の無償化など、社会福祉の面では自民党よりも優れていた。
 安倍内閣は、「民主党=悪」と決めつけ、鳩山内閣時に国際公約した「2020年までに、1990年度比でCO2を25%減らす」という約束を、反故にしようとしている。もしこんなことを行えば、国際的な信用は得られなくなる。
 民主党時代の約束を継続させ、環境分野を成長産業として育てるべきだろう。

 それから安倍内閣は、生活保護を削減する考えである。理由は、派遣社員よりも生活保護受給者の方が、年間の所得が高いことが理由のようであるが、それならば生活保護を受けている人を、地域ボランティアとして公園の清掃などに活用する方法もある。
 10年で200兆円規模の大型公共事業を行う資金があるならば、その内の1%で良いから、公共交通の維持とサ−ビス改善に振り向けて欲しい。
 安倍内閣は、産業界からの要望を安易に呑むのではなく、2020年までに1990年度比でCO2を25%削減する努力を行うべきである。これが日本の世界的な信用を高めるだけでなく、「環境」という分野で新たな雇用を創出することに繋がるだろう。