周遊きっぷの廃止と青春18きっぷの行方

 今年の3月末で、周遊きっぷが廃止される。理由は、利用者が少ないからだ。周遊きっぷは、1998年にそれまで発行されていたワイド周遊券やミニ周遊券を継続する形で販売が開始された。従来のワイド周遊券やミニ周遊券のようにレディメードではなく、出発駅からの入り口の駅までの乗車券(行き券)、ゾーン券、出口の駅から出発地の駅までの帰り券から成り立つ、オーダーメードの切符である。ゾーンエリア内では、特急列車の自由席が乗り放題になるが、ワイド周遊券やミニ周遊券と比較して、有効日数が短い上、発券に手間の掛かる切符であったため、販売開始当初から人気はイマイチだった。
 それでも販売が開始された時は、65のゾーン券が設定されていたが、徐々にその設定箇所は減らされ、昨年の3月以降は13箇所と、販売開始当時の1/5まで減少していた。また道南ゾーン券などは、最初は青森駅が入口であったが、その後は中小国に変更され、急行「はまなす」などが利用しづらくなった。

 周遊きっぷの廃止に伴い、周遊旅行が多い北海道に関しては、JR東日本JR北海道が共同で、北海道フリーきっぷ、道南フリー切符などを発行するようだが、有効期間は前者が5日、後者が3日と短い。せめて前者が7日、後者が5日にしてもらえないだろうか。またこれの経路であるが、東北新幹線か東京から盛岡までの東北本線寝台特急「あけぼの」が、運転される上越線羽越本線奥羽本線経由に限定される。もし「北斗星」や「カシオペア」を利用する場合、IGRいわて銀河鉄道青い森鉄道の乗車券などは、別途に必要となる。そのためこの企画切符も、使い勝手が良いとは言えそうにない。

 ここ数年、JRは企画切符などの使い勝手を悪くする傾向にある。昨年のJR乗り放題乗車券も、連続する3日間というように、使い勝手が悪くなった。また青春18きっぷも、ばらして使えなくなっている。
 このような企画乗車券は、確かに利益率が低いかもしれないが、固定客を作る上で重要である。ただ単に目先の利益だけに奔走するのではなく、利用者のことも考えた経営も実施して欲しいし、実施するべきだろう。

 周遊きっぷの廃止は、1955年から始まった国鉄周遊券時代からの良き伝統の廃止である。このまま行くと、やがては「青春18きっぷも廃止されるのではないか」という危機感すらある。青春18きっぷなどは、自家用車の利用を抑制する効果もあるため、JRの社会貢献として、継続させなければならないだろう。これがあるために高齢者の外出の促進にも貢献していることを、認識して欲しいものである。