人と環境にやさしい交通をめざす会in新潟で、近鉄内部・八王子線のBRT化への反対と、北総線の割高運賃の是正について報告しました

 3/16に人と環境にやさしい交通をめざす会in新潟が開催されました。午前中は5つのセッションに分かれて研究報告会が実施され、午後からは京都大学大学院教授の土井勉先生の基調講演に続き、公共交通活性化に関するパネルディスカッションが行われました。
 午前中の分科会で筆者は、「近鉄内部・八王子線のBRT化に対する警鐘」と「高雄市の軌道系都市交通の現状-北総線の割高運賃の値下げを模索する」の2本の報告を行っている。近鉄内部・八王子線のBRT化の件であるが、昨年に近鉄が廃止を表明したが、今年の2月に四日市市長が「BRT化はあり得ない。鉄道として存続させたい」という意思表明をしたため、多分、第三セクター方式で存続すると思う。筆者が予稿集を執筆していた時は、四日市市長のコメントが無かったため、年間の赤字額は2億8,000万円であるのに対し、大塚良治湘北短期大学准教授の試算によると混雑時の速達性の便益が6億7,000万円であり、時刻表が年間で120万枚も販売され、1部当たりの宣伝効果が50円として計算すると6,000万円の便益があり、これにBRT化することで生じる地価下落のより固定資産税の減収や、大気汚染の悪化、高齢者の外出機会の減少による消費の減退や寝たきり老人の増加による医療費の増大を加味すると、内部・八王子線が存続することによる便益は10億円を超える可能性が高いことを説明した。そのため762mmゲージのまま、車両を新製して鉄道として存続させることを提案した。
 フロアーからの反応は、762mmゲージのまま鉄道として存続させることが、最も良いという感じであった。

 2つ目の報告は、台湾第二の都市である高雄市の地下鉄は、クルマ社会を迎えてから導入したこともあり、上下分離経営と不動産開発利益還元方式を採用し、駅構内に積極的にテナント誘致を行っているため、運賃収入よりも関連事業収入の方が多くなっている。
 一方の北総線であるが、オイルショック後に第一期区間が開業したことや、千葉ニュータウンの分譲が進まないこともあり、初乗り運賃が非常に高く、3kmまで190円、5kmまで290円と首都圏の鉄道の常識を大きく超えている。北総線の異常なほど運賃が割高であることは有名であり、北総線の沿線に住んでいるだけで就職やアルバイトの採用で跳ねられることになるぐらいである。また駅から徒歩で5分の場所に住んでいても、運賃が非常に割高なために違う経路を指定されるという。
 このように割高な運賃になる理由は、独立採算制の運賃や京成電鉄北総線の併算運賃もあるが、京成電鉄北総線の利益の吸い上げる構造にも問題がある。2010年7月に京成の成田空港線として高砂から北総線を経由して、成田空港に至る路線が開業したが、その際に北総線の運賃体系の見直しが全く行われず、近距離ほど割高になる運賃が踏襲されてしまっている。

 分かりやすく説明すると北総線は、別名京成成田空港線でもあり、京成電鉄は第2種免許を取得して、高砂〜成田空港間を運行している。「スカイライナー」は、ただ単に素通りするだけであり、北総線沿線住民に何の利点もない。それどころか、通過待ちの影響で不均等なダイヤや列車の退避が増えて、返って迷惑なぐらいである。
 あまりにも不公平かつ不公正な運賃制度が温存されているため、北総線沿線の住民は「運賃値下げ訴訟」を起こしている。
 北総線も、駅構内にテナントなども満足に誘致しておらず、かつ運賃が割高であるのは、沿線自治体が補助金を満足に支給しないためだと、完全に開き直っている。このような経営姿勢に対しても、北総線沿線の住民は怒っているのである。

 筆者は、北総線の異常なぐらい割高な運賃を下げるためには、高砂〜成田空港間のインフラは千葉県や沿線自治体が所有するよういし、運行は京成電鉄が実施するという上下分離経営の実施が望ましいと考えている。これを採用することで現在、上野〜西白井間で950円という異常な運賃を550円程度に値下げするようにすべきだと考える。上野〜西白井間は、距離で言えば30km強であるため、JRの運賃であれば540円程度である。これぐらいが妥当ではないだろうか。
 運賃を下げるための経営努力として、鉄道事業者は積極的に駅構内にテナントを誘致する必要がある。現在の北総線の運賃は、法外な水準にあり、交通権学会が定める交通権憲章の「低廉で利用しやすい運賃・料金」から完全に逸脱している。
 北総線沿線の発展と、沿線住民の日常生活の足を確保するためにも、上下分離経営を採用して、運行は京成電鉄に一任させるようにすべきであり、公正取引委員会や消費者委員会も常に監視する必要がある。