クルマ社会を問い直す会主催の「道路を作ると日本はおとろえる」という講演を聴く機会を得ました。

 4/27の15:30から、クルマ社会を問い直す会の主催で、下北沢にある北沢区民会館で服部圭郎教授による「道路を作ると日本はおとろえる」というタイトルの講演が実施された。


服部先生のお話の中で、道路建設と商店街の衰退を取り上げれている。商店街関係者は、未だに道路が整備されると商店街の売り上げが向上するという幻想を持っているらしい。


商店街の真ん中に自動車が走行できるような道路があると、道路がコミュニティーを分断するため、店舗密度が半分になるという。その結果、ベビーカーの利用者は、怖くて利用できなくなってしまう。自動車が走行可能な道路が出来ると、容積率は上がるが、テナント料が高いため、チェーン店しか入らなくなり、商店街の魅力は低下するとのことであった。


 服部先生が紹介して下さった群馬県太田市の駅前商店街の衰退の事例が興味深かった。太田市では、郊外に大型商業施設の建設が進み、中心部の商店街は、衰退し始めていた。そこで商店街を活性化させるために駅前の道路を拡幅したが、自動車の通行量が増えたが、商店街の売り上げは下がってしまった。特に高齢者やベビーカーを持った市民は、危なくて買物しづらい環境となってしまったことが原因である。自動車が通り抜ける道路が真ん中にあると、コミュニティーを分断してしまうのである。


 ところが商店街の商店主達は、店舗を風俗関係の業者に貸してしまったため、太田市の駅前が風俗街となり、夜間でも明かりが煌々と付くという皮肉な結果となった。これでは治安が悪くなり、一般の市民は安心して生活出来ない。
「街は皆のもの」であり、商店街の商店主も「テナント料さえ入ればいい」などという自己中心的な考え方を捨て、「皆で商店街を盛り上げる」という姿勢で臨んでほしい。また行政も郊外への大型商業施設の立地を規制する条例と、中心市街地に風俗の出店を規制する条例を制定して、市民が安全・安心して暮らせる魅力ある街づくりを行って欲しい。


 商店街と関係するが、児童公園の中でも子供が安心して遊んでいる所は、大きな道路から離れた場所にある児童公園である。やはり自動車の通行が多い所にある児童公園は、親も安心して子供を遊ばすことが出来ない。また交通事故以外に、そのような場所にある児童公園では、自分の子供が誘拐されることを心配する。
 道路建設が進むと、自動車は徒歩や自転車とは異なりスピードが出るため、道端の看板も巨大化して、街の景観も損ねてしまうことに繋がる。


昨今、限界集落という言葉が使われ始めているが、このような地域を活性化させるため、各自治体などの道路建設を促進させている。限界集落に住む高齢者は、先祖からの墓を守る(管理する)目的があるためだという。
それが道路建設が進むと、市街地から自動車で墓参りに行くようになり、限界集落を更に衰退させる方向へ向かわせるという。その上、高齢者ドライバーが起こす交通事故が増加傾向にある。


 服部先生の講演を聴き、日本では新たな道路建設の必要性が低下していることが確認できた上、今では弊害の方が目立つようになった。今後は、橋や高架道路の老朽化などで架け替えの必要性が高まるが、ソウル市のように高架道路を撤去し、元の河川を復元させるという施策も検討する必要があるのではなかろうか。


その意味では、今回のシンポジュームは有意義であった。