北陸新幹線開業後の並行在来線

 昨日、富山市北陸新幹線開業後の並行在来線問題について考えるシンポジュームが開催された。
 まず最初に富山高等専門学校の岡本勝規准教授から、「アンケートなどの現れた利用者が望む並行在来線」というタイトルで報告された。
 沿線住民は、JRで経営しようがしまいが、金沢〜新潟間を結ぶ特急「北越」の存続を望んでいる。これは新幹線が開業しても、高崎で北陸新幹線上越新幹線の乗り換えが強いられる上、遠回りになることから運賃の値上げになり、かつ特急料金が細切れになることが影響している。
 次に富山県並行在来線対策協議会の役員の方から、新幹線開業後の富山県内のローカル列車の輸送量は、7,800人/日である。この数値は、しなの鉄道の7,002人、IGRの3,023人、青い森鉄道の990人、肥薩おれんじ鉄道の831人よりも遥かに多く、富山〜金沢間に関して言えば11,094人と、ローカル列車だけで、秋田新幹線の盛岡〜秋田間を超えており、幹線の輸送量であることが強調された。また北陸本線は、100円の収入を得るのに150円の経費が掛かるが、金沢〜新潟間に特急「北越」を存続させたり、金沢〜富山間に新駅を設置するなどを行えば、金沢〜富山間では収支均衡が図れる可能性があるとのことであった。北陸本線の営業係数150は、糸魚川直江津間などの需要の少ない部分も含んでいるためである。富山県新潟県第三セクター鉄道の運行であるが、新幹線開業後は泊駅で乗り継ぐことになり、現在は金沢・富山〜直江津まで直通運転されているローカル列車は、完全に分断されることになるらしい。
 
 公共交通をよくする富山の会の世話人である渡辺眞一氏からは、国鉄時代の1984年(昭和59年)12月27日の朝日新聞では、当時の中曽根内閣は、新幹線が開業すると並行する在来線は、「廃止」と決めていたという旨の話があった。中曽根内閣は、地域住民はマイカーで移動すればよく、ローカル輸送が中心となる並行在来線に多額の税金を投じて維持するのであれば、沿線住民に自家用車を支給した方が安上がりだと考えていたようだ。また貨物輸送は、トラックへ置き換えれば良いと考えていた。その後、国鉄分割民営化でJR貨物の誕生などもあり、「並行在来線はJRから切り離しても良い」とトーンダウンするようにはなった。要するに、最初から並行在来線は「廃止」から始まっており、沿線住民も新幹線の方を喜ぶだろうという安易な考え方があった。

 並行在来線の維持に関しては、2011年度からは鉄道建設・運輸施設整備支援機構から、貨物調整金が並行在来線を運行するIGR、青い森鉄道肥薩おれんじ鉄道しなの鉄道に支給されているが、これが支給されるのは10年間だけであり、かつ在来線に特急列車を運転すると、貨物調整金が減額されるというとんでもない制度である。官僚的発想と言わざるを得ない。肥薩おれんじ鉄道の阿久根などは、新幹線から完全に離れており、街の衰退が始まっている。並行在来線で昼間の優等列車を運転しても、貨物調整金の減額をするようなことは、してはならない。
 北陸新幹線の開業により、富山県内の第三セクター会社に損失補てんとして、貨物調整金から1,000億円、新幹線に1,500億円支給されるという。
 北陸新幹線が金沢開業したとしても、富山〜金沢間はJR西日本が直営で運営するべきだった。ローカル列車だけで、1日に11,094人も乗車する幹線であり、JR九州が運営する鹿児島中央〜川内間よりも、遥かに輸送量が多い。
 今後は、貨物調整金制度を見直し、並行在来線を運行する第三セクター鉄道の会社の経営を改善するためにも、昼行の特急列車を運転しても、貨物調整員の支給は、減らすのではなく、現状維持をするべきだろう。