サーベランス証券による西武HDに対するTOBへの怒り

 西武鉄道の再上場の条件としてサーベランス証券が廃止を提案した西武秩父線のローカル列車に乗車した。
 秩父線の開業は1968年頃と比較的新しく、トンネルなどが多い線形である。数年前まで秩父で産出する石灰石を輸送するため、貨物列車も設定されていたが、現在では廃止されている。
 ローカル列車は4両編成であるが、2扉のクロスシート車であるため旅情が出る。日曜日に乗車したこともあり、車内に通勤客などの姿はなく。飯能までは1ボックスに1名程度の利用状況であった。それでもピクニックやハイキングに出掛ける人も気軽に利用していた。
 サーベランス証券の要求であるが、はっきり言って許せない暴挙である。鉄道会社の価値は、株価で評価するものではない。ローカル線も含めた社会的便益も加味して評価するべきである。日本では「金儲け=悪」という考えが浸透しているが、良い製品やサービスを提供し、顧客から支持された結果、金を得ることは問題ではない。
 サーベラス証券の要求は株価を吊り上げて、売却を行ってキャピタルゲインを得るというストックオプションの悪用である。サーベランス証券のようなハゲタカファンドにしてみれば、西武秩父線山口線多摩川線、国分寺線という赤字路線を廃止して地域住民が困ろうが、自分たちは金さえ手に入れば良いという連中である。このようなマネーゲームは絶対に反対であるし、地域住民の日常生活の足を奪うという行為が許せないのである。
 もしTPPに加盟すると、ISD条項によりサーベランス証券の行動が正当化され、日本政府がサーベランス証券に損害賠償を行うという事態も生じてしまう。それゆえTPPには、絶対に反対の立場である。
 西武HDは、みずほFGなどの主要株主を味方に付けて、サーベランス証券に「NO」を突き付けて欲しいと思う。またそのような姿勢を見せようとしている。これを見て、西武鉄道は地域住民の日常生活の足を守るという社会的責任を実感していると感じた。こういうことが再燃しないようにするためにも、住民などの有志による出資なども検討しなければならないかもしれない。

 鉄道会社の今後であるが、これは西武鉄道だけに限ったことではなく、JRなども該当する。1つの鉄道会社であっても一律に考えるのではなく、儲ける部門と不採算ではあるが社会的に必要な福祉部門に分けて考える必要がある。政府は未だに、「鉄道事業=営利事業」と考えているが、西武秩父線などは路線単体で見れば赤字であるが、西武グループのレジャー開発という視点も加味して考えれば、黒字と言える。
 社会的便益で言えば、西武秩父線があることで飯能市秩父市などの地価も維持されている上、雇用創出や道路交通渋滞の緩和、高校生や高齢者の日常生活の足の確保にも繋がっている。そのため社会的便益も完全に「正」である。
 参考までに近鉄内部・八王子線の年間赤字額は約3億円であるが、社会的便益で言えば軽く見積もっても10億円を超える。また輸送密度が360名程度で、年間の赤字が2億円の秋田内陸縦貫鉄道も、社会的便益で言えば年間で6億6,000万円と完全に「正」である。
 大手鉄道会社などの不採算部門は、私達市民がサポーターとして出資したりして、支える必要性を感じる。つまり1つの鉄道会社であっても多制度が必要ではなかろうか。